時代は第二次世界大戦下、一昔前の戦争である。
2003年3月19日 IRAQ-米英戦争、やはり始まってしまいました。
朝からCNNやABC画面に張付状態。しかし驚くほど戦争を感じない。
前の湾岸戦争の時も、アフガンの時も、戦争を感じなかったが・・
それはそうだ、断片的な侵攻映像とミサイル映像、地図画像と、
TVコメンテーターの戦略・戦術論、まるでTVーGameの世界なのだ。
ランチがてら、出掛ついでに観たのが「戦場のピアニスト」だった。
時代は第二次世界大戦下、一昔前の戦争である。
1939年ナチスドイツはポーランドに侵攻した。
ユダヤ人のピアニスト、シュピルマン家の平穏な生活は激変する。
ワルシャワの一画をレンガ壁で封鎖し、ゲットー(隔離地区)が造られた。
ユダヤ人が押込められた、そこでナチスの迫害が始まった。
財産や食料が奪われ、日々 気まぐれな殺戮が実行されたのだ。
たいした理由もなく次々とユダヤ人を平然と殺戮する
ただただ事実の重みに圧倒されるばかりであった。
戦争の悲劇は、家族の離散、弱い者の死である、
それが淡々と日常的に繰り返されるのだ。これは本当に怖いのです。
この前半こそ、戦争の本質、人間のおろかさを見事に表現している。
そして、次の段階、組織的人種根絶政策(絶滅収容所送)が始る。
W・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)はポ-ランドの一流人気
ピアニストであった。
多分、ユダヤ人社会では、民族の誇りでもあったのだろう。
それ故、仲間の機転により、寸でのところで移送貨車から逃れられた。
しかし、これは収容所に送られる家族全員との最期の別れを意味した。
ドラマの後半はシュピルマンの一人逃避生活である
芸術家というものは生活力の無い存在だ。ピアノ以外は不器用の極み、
体も軟弱だ。ある意味で真先に死んでしまう人種である。
しかるに彼は生き残った。彼の才能を惜しんで、ユダヤ同胞達、
ポーランド人の手助けがあったのだ。そしてドイツ将校までが
見逃してくれたのだ。やはり「芸は身を助ける」ですネ。
瓦礫の廃墟に無傷のグランドピアノ、音楽を愛するナチス将校、
天才ピアニスト、そして満月の光、正に奇跡的な符合でありますが、
ショパンの調が流れ、忘れられない名シーンとなりました。
監督はロマン・ポランスキー(70才)である、1933生まれで、
ポーランド人、強制収容所を実体験し、母はそこで殺された。
訪米後、彼は「ローズマリーの赤ちゃん」'68をヒットさせた。
そのハリウッドで、1969年8月、妻であり女優のシャロン・テートが
妊娠8ヶ月の身重で、カルト集団マンソン・ファミリーに惨殺された。
当事、R・ポランスキーの奇異な作風からか、事件直後しばらく、
(当時私も思ったが)彼自身が犯人と疑われていたと記憶する。
人類史上最も残酷なホロコーストの経験と家族の惨死という自身の
悲しみを背負った、ポランスキー故、逆に、クールに創り得た作品。
ポーランド街並みとゲットーを再建し、戦争当時を見事に再現した
スタッフに敬意を表します。
今現在、実行され進行中の戦争は、そのTV報道から、死んで行く人々の
悲しみはさっぱり伝えられない、しかし60数年前の古い戦争の悲しみは
この映画で十分感じる事が出来た。改めて映画の凄さを感じました。
エンディング・クレジットはオーケストラ音楽会そのものだった。
誰一人立ち去らない、音楽終了と共に画面が消えた。
観客は拍手をしながら退場して行ったのです。
こんな体験は始めてです。
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