映画の舞台が旭川ゆえ、市内の風景が観れるかな?と思い劇場に行ったが、旭川は
刑務所内のシーンのみ、しかし久々に「良い映画を見たな~」という感想だった。
という訳で(西川美和)監督の最新作「すばらしき世界」に一言。
原作は1991年の小説(佐木隆三)の「身分帳」である。この本既に絶版であったが、
映画化に際し2020年復刊された。
西川美和さんが本の帯に記している「こんなに面白い本が絶版とは、世の中はなんと
損をしているんだろう。私はなんと幸運なんだろう。いっそこのまま誰の目にも触れ
ないうちに、私がこっそり映画化する!」とその夜のうちに心に決めた。
(佐木隆三)の代表的な小説は「復讐するは我にあり」であるが、佐木は実際に
起こった事件を徹底取材し、その犯人の実像を追う、いわゆる犯罪ノンフィクション・
ノベルというジャンルを確立した。1963年に5人を殺害した希代の殺人鬼・
西口彰を小説化して、昭和50(1975)年直木賞を受賞し、1979年(今村昌平)
監督により映画化された。主役は(緒形拳)であった。私は封切りで見たが、
あまりに悍ましく後味悪い映画ゆえ、その後一度も見直したことは無かった。
さて「すばらしき世界」は、殺人罪で服役していた三上正夫(役所広司)は13年の
刑期満了でマイナス22度の極寒の旭川刑務所を出所した。彼は福岡出身だが私生児で
本籍無く母にも捨てられ、お決まりのヤクザ道に入った。少年院と刑務所出入りし
通算23年の刑期に及び既に44歳になっていた。高血圧症と不眠という持病を持ち、
もう二度と刑務所に戻らないと心に誓った。しかし外は様変わり、持ち前のヤクザ
気質と激高的性格が抜けず中々社会に対応できない、又日本の社会自体が社会復帰に
対し冷たかったが、これがテーマ。
佐木隆三は彼の刑務所での所業&カルテ「身分帳」を元にして綿密なる取材により、
三上の社会と対立する様、復帰への苦闘を1991年「身分帳」と「行路病死人」で
いう小説にした。今般映画を見た後にこの小説を読んだが、あまりに映画が素晴らし
かったのか、主役の三上は役所広司そのものであり、回りの身元引受弁護士(橋爪功)
とその妻(梶芽衣子)も映画そのもの、極道の妻(キムラ緑子)が良い、何よりも
近所のスーパーの店長(六角精児)に至っては実人物ではないかと思えるほど上手か
った。この人、TVでローカル汽車と酒酔い飲み屋探訪しているが、今回で見直したネ。
世の中、自己責任が叫ばれている昨今、子供の人生は環境によって大きく左右される。
大人の責任は重い、社会も育児放棄や虐待から救済し、子供を守る環境にせねばならない。
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