50を過ぎた人にとって、心の隅に、そろそろ死というものを意識します。
とりわけ夫婦であれば、先立たれ残された自分はどんな生活をするのか?
昔であれば、菩提を供養し尼になるとか、思い出を大切にひっそり生きる
人も居たろうが、昨今は第2の人生を楽しむ人が多いと思われる。
そんな風潮の世に、マリーは夫の死を認めようとしない、家に帰ると
夫がふっと現れ、以前と同じまぼろしの生活をするのであった。
マリーはパリのソルボンヌ大学の英文学の講師である。講義の中で
教えるのはバージニアウルフの「波」彼女の入水自殺と夫の死を
微妙に符合させていた。
親しい友は心配し、新しい人生を!と恋人を紹介する。相手は年相応の
渋い中年、二人のS@Xシーンはフランス映画らしくやや倦怠的、特に
夫と比べ「あなた軽すぎる」と笑いころげるシーンは、太め中年にとり
心強い科白であった。
さてマリーを演じたのは(シャーロット・ランプリング)
あのルキノ・ヴスコンティ監督に見出され「地獄に堕ちた勇者ども」'69
で世にデビュー、「愛の嵐」'74で鮮烈な印象を残したランプリングです。
もう50半ばだろう、しなやかな体型を維持し、深いグリーン・グレイの
瞳は健在。こんな役をやれる女優は彼女くらいだろうと思った。凄い!
好きなシーンがあった、スーパーマーケットで買い物する時の
嬉しそうな表情、バルバラのシャンソンがバックに流れていた。
そしてラストシーン、夫の死を確信したにもかかわらず、遠く砂浜に
男の姿を見つけると、そこに一心に走リ行く姿は余韻を残してくれた。
我が女房に、同じ事を期待できる何ものも無い設定ながら
45才以下の方は見る価値なき映画、年配にお薦めの一本でした。
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