2018年5月 第71回カンヌ国際映画祭で是枝裕和監督
の「万引き家族」が最高賞パルム・ドールに輝いた。
これは大快挙ですナ。
日本がこの賞を獲得したのは1997年「うなぎ」(今村昌平
監督)、1983年「楢山節孝」(今村昌平監督)、
1980年「影武者」(黒澤明監督)、1954年「地獄門」
(衣笠貞之助監督)、また2004年に柳楽優弥が
「誰も知らない」(是枝裕和監督)で男優賞を受賞
しています。
内容は東京下町の狭い一軒家で暮らす5人家族、
父・柴田治(リリー・フランキー)は仕事嫌いの日雇作業員、
母・信代(安藤サクラ)洗濯店のパートだがリストラされる。
信代の妹・亜紀(松岡茉優<まゆ>)は風俗嬢、息子の
祥太(城桧吏<かいり>)は不登校児、そしてこの家主でも
ある祖母・初枝(樹木希林)が同居していた。
生活は貧困、祖母の年金を当てにしている
父は祥太に万引の手口を教え、二人の絶妙な連携で
万引を繰り返し、生活費を稼いでいた。
こんな貧しい境遇であったが、皆仲良く暮らしていた。
ある冬の夜、父と息子は寒さで震えている幼い女の子ゆり
(佐々木みゆ)を見つけ、不憫に思い家に連れて帰った。
体の傷から虐待を受けていたらしい。祖母は優しく手当する。
女の子の手首の傷を見た母は自分も同じ所に傷があり、
昔同じ境遇だったことを思い出し、抱きしめた。さあ6人
家族の生活が始まった。万引きで暮らす生活が・・
ある日祥太は万引きで逮捕され、ゆりが発見されるや
家族は誘拐犯とされた。また祖母の死を隠していたため、
殺人容疑と年金不正受給者とされ、マスコミに大きく
取り上げられた。
家族の正体が次々明らかされて行く、実は血のつながらない
家族だったのだ。祥太も亜紀も祖母さえも他人であったのだ。
今、世間でおこっている家庭内・社会問題は何か?
「ドメスティック・バイオレンス」、「幼児虐待」、「いじめ」
「登校拒否と家出」、「パチンコ店の駐車でよくある車内
での幼児熱中症死」、「死亡者年金受給不正」等、
気の滅入るいやな事件が目白押しである。
それらを全て題材にした映画である。
一見普通の家庭で、ひどい目にあっている人がいる。
そんな連中が、貧困で不法な家庭に逃げ込んで、
愛され安らかに暮らしていた。貧しくとも優しさである。
正直、私には昔、黒澤明の「どですかでん」1970
を観た後の何ともいえぬ苦い後味が残ってしまった。
リリー・フランキーの飄々とした「ダメおじや振り」
安藤サクラの圧倒的な「現実感と存在感」
城桧吏くんが見せる微妙な「少年の感性」
佐々木みゆちゃんを見てわかる「子供のひ弱さ」
松岡茉優が見せた「女の母性的やさしさ」
そして樹木希林さんの「匂ってくる加齢臭」ぶり
駄菓子屋のおやじ柄本明の「大人の優しさ」
それぞれの演技に脱帽しましたワ
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