内容を全く知らなくても「題名」と「監督」と「俳優」によって、
見てしまう映画がある、それがこの映画「おとなのけんか」2012、
原題はCARNAGE=殺戮であります。
監督はあの巨匠(ロマン・ポランスキー)
両親をアウシュビッツで殺され、移住した米国で映画監督となり、
「ローズマリーの赤ちゃん」'68が大ヒット、妻シャロン・テートは
惨殺され、自ら少女をレイプして強姦罪で逮捕され、脱走して欧州へ
国外逃亡、そこで「戦場のピアニスト」'2008を製作して、なんと!
アカデミー監督賞を受賞してしまった。ホント!数奇な運命の人だ。
俳優は(ジョディ・フォスター)、「タクシー・ドライバー」1976の
12歳の少女娼婦役で世界的賞賛を受け、「告発の行方」1989のレイプ
被害者役と1991「羊たちの沈黙」で2度もアカデミー主演女優賞を受賞、
イェール大学を卒業する才媛、シングルマザー、同性愛者を公言した。
俳優は英国女優(ケイト・ウインスレット)、「タイタニック」1997が
大ヒットしてブレイク、「愛を読むひと」2008でアカデミー主演女優賞
を受賞、あらゆる映画賞をもらい続ける女優。
俳優は豪州出身(クリストフ・ヴァルツ)、「イングロリアアス・バスターズ」2009の
超個性なるナチス将校役でカンヌとアカデミーで助演男優賞を同時受賞
した人。
そして最後に(ジョン・C・ライリー)、「ブギーナイツ」1997のポルノ
役者以来、私はこの人のファンになった。ミュージカル「シカゴ」2002
では歌と踊りを披露してくれた。この名があるとつい見てしまう、この
「おとなのけんかも」も同じ理由であります。
この映画、大ヒットした舞台劇をR・ポランスキーが気に入り映画化
したものである。よって配役は上に紹介した4人のみ、舞台はマンション
の一室とトイレのみ。
内容は10代の子供同士が喧嘩して、一人が前歯を折った、二つの家庭の
親がその謝罪と和解の話し合いを持った。両家とも知的でレベルが高い、
静かに大人の応対をしていたが、次第に本音が出始め、エキサイトして
ののしり合となる。お互い生き方や人格まで批判し、さらにそれぞれ
夫婦喧嘩にまで発展してしまう。
4人それぞれの異なる性格、価値観の違い、夫婦間の日頃の不満本音が
出てくる、面白さの所以は、4人の芸達者を揃えたキャスティングに尽
きると思いますヨ。
親が「おとなのけんか」をしている内に、子供同士はすっかり仲直りして
外でジャレあって遊んでいた。「子供の喧嘩に親は口出しするな」の謂れ
がこの映画の「落ち」である。しかしその意味では、この舞台も映画も、
もはや古き良き「古典の世界」だと思われる。
今や子供の喧嘩は「いじめ」が絡み、下手をすると「自殺」や「体罰」に
発展する社会問題になっている。米国では学校内大量射殺事件も発生する
ご時勢で無視できないものだ。もはやR・ポランスキーが「コメディ」と
して扱う題材では無いのであります。 老いたりポランスキー!
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