トム・クランシーのベストセラー小説「恐怖の総和=The Sum of
All Fears 」の映画化「トータル・フィアーズ」を観て参りました。
トム・クランシー小説の基本思想は「世界中のどんな小国でも
米国を攻めて来るゾ」と言ってる様だ。
弱腰の我日本ですら、彼の小説「日米開戦」では米国に攻め入るし、
[合衆国崩壊」では、日本のジャンボジェット機がホワイトハウスに
特攻する内容であった。正に9・11を予測したと注目されました。
今回の映画、米国の敵は何とドイツのネオナチであった。
原作の小説では旧過激派左翼だが、今やその勢力は力が無さ過ぎて
ネオナチに変更されてしまった。
又、現在の中東情勢は全く米国の手に負えない状況、小説にあった
ライアンの手柄、中東和平協定は見事に削除されてしまった。
主役ジャック・ライアンは小説ではCIAの副長官という重役であり
体力も衰えはじめた中年という設定、正にハリソン・フォードそのもの
といえるのに、映画では、わざわざYoungライアンに脚本を替えたのは、
原作者のT・クランシーに嫌われたのだろうか?
しかし主役交替は正解であった。H・フォードはもはや大統領役者
貫禄があり過ぎますし、何と言ってもマンネリが解決した。
新ライアン(ベン・アフレック)が若輩だが有能なCIA分析官を旨く
演じましたネ。
また新米がゆえに、大統領も高官もライアンの情報分析を
なかなか受け入れてくれないもどかしさが、この映画の
スリリングな見所でもある。
老練なCIA長官を演じたモーガン・フリーマン、相変わらず旨いですネ。
大統領との応答のコツを教えるくだりは正に師匠そのものだ。
この所のM・フリーマンは白人の若者(男女とも)を支える、頼りの
ベテラン黒人というの美味い役を独り占めしている感がありますネ
あの膨大な量の各論エピソードとクランシー・ディテェールを
割愛したのは仕方ないだろう、内容を単純化してスッキリさせ
2時間で終了したのは、映画興行としては正解である。
しかし私にとり、小説で面白かったライアンと女性上席顧問との
権力闘争と、クランシーお得意の原子力潜水艦エピソードが
全くカットされたのが寂しい。 この手の国際政治ドラマなら
どんなに長くても飽きない私なのです。
また核爆発が起こった後の第3次世界大戦になるか否か?
米国大統領とロシア大統領の、やりとりはまるで「フェイル・セーフ」
'64ばりの面白さだった。
それにしても爆心地の描写はいったい何だ!米国人の核に対する認識
は楽観を通り越して、無知そのものだ。「トゥルー・ライズ」でも
あきれたことがあったが、
あそこで走り廻ったライアンも恋人も、今ごろは放射能障害で、
その後のライアン・シリーズは無かったはずである。・・・・・
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