2017年のノーベル文学賞は石黒一雄氏が受賞した。
彼の国籍は英国であるが。両親は日本人で彼も日本で生まれた人、
ノーベル文学賞の代表作は「The Remainis of the Day」=
「日の名残り」1989年出版され、1993年に映画化されている。
もう一本「Never let me go 」=「私を離さないで」2005出版され2010に
映画化された、これに一言なのですが・・・偶然にも、同じ日本人で
2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した(中山伸弥)博士が
作製したあの「iPS細胞」の行き着く所をテーマにしたストーリーなのです。
iPS細胞とは人間の皮膚などの体細胞に因子を入れ、創られた
人間の組織や臓器に分化増殖する多能性幹細胞なのです。
iPSで作られた臓器は移植され多くの患者が救われることになるのです。
これはあくまで理論上の話であるが、最も優れた臓器を作るには人間
まるごと作ることである。何故なら臓器の大きさや、臓器として働きを
成したものを移植すればこれに勝るものは無いからだ。
iPSで精子と卵子を造り、それらを受精させれば理論的には人間は
創れるはずなのです。
という訳で、時は1967年ごろ、臓器移植により、もはや不治の
病など無くなり、寿命は100才を超える様になった。舞台は田舎町に
あるヘールシャムという学校。そこで遺伝子工学で創り出された人間
クーロンが、幼少期から16才まで養育されていた。臓器提供のために・・・
外界と隔離された全寮制の学園である。保護官の下で厳しく教育を
受けている。ある意味自分の意見を持てない従順な生徒が造られる、
しかも自分達は何のために存在するのか?将来臓器を提供する
ためのヒトモドキであることはハッキリと教えられていなかった。
少年や少女はこの学園で育ち卒業した。大人になった三人、
キャシー(キャリー・マリガン)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)
そしてルース(キーラ・ナイトレイ)当然三人の間に愛や性があり、
静かな葛藤があった。
臓器提供すると一回で使命完了(死去)もあれば四回にも
及ぶことがある、その時は意識はあるがだた見ているだけの固まり
に過ぎないのだ。当然死にたくはない、しかし粛々と提供して行く。
過酷で残酷な事であるが、止めるべきと言う人間はいない、
なぜなら今更癌を不治の病に戻せない。自分の子供や配偶者や
親を不治の病で死なせない事の方が大事なのだから・・・クーロンは
自分達とは異なる、家畜と同等と思うしかないのだ。
キャリー・マリガンの抑制した演技、本当に目だけで演技をやり遂
げた。しかし、あの悲しそうな目で見られたら、あまりに不憫で、
こんな計画は止めろ!と叫びたくなった。
殺伐として風景のイギリス、ノーフォークの海岸に打ち寄せる波と風と
提供者の若者たち、正に寂しさの極みであった。
エミリー校長(シャーロット・ランプリング)の言葉が重い。
監督マーク・ロマネク
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