投稿情報: 05:42 カテゴリー: た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
ダニエル・グレッグの007は本当にストイックだ、これでも007なのか?
と思うほどだ。
しかし良く考えてみると、昨(2008)年後半から勃発した世界金融危機と
世界経済破綻により世界中の人が困っている時、今までの様な荒唐無稽の
悪党を退治するべく、軟派に007が女たらし宜しく、アクションしても、
観客は馬鹿らしくて見てられなかったかもしれないと思えば、この007は
正に時流にあった007なのだと思った次第。
D・クレッグの007第1作(カジノロワイヤル)'06はジェームス・ボンド
が英国諜報部MI-6から「DoubleO」いわゆる殺しの番号を取得するため
二人の裏切り者を抹殺をすることからはじまった。(007ビギニングだ!)
前作では、最初少々野暮ったい無頼タイプの男が、しだいにタキシードの
似合う伊達男(典型的なJ・ボンド)に洗練されていく様を見せてもらった。
愛する女(エヴァ・グリーン)を失ったボンドは、死に追いやった男を捕え
常用車アストン・マーティンDBSのトランクに押し込めMI6へ移送する。
しかし組織の追手が車を襲う、前作のまったく続きからこの映画がはじまった。
凄いカーチェイスである、只々ボンドのテクニックと反射神経のみで追手を
撃退した。渋い黒塗りのアストン・マーティンには特殊な仕掛けも装備もなく
最後はボロボロになってしまう。
このオープニングの徹底したリアルさ、遊びを排除したストイックさこそ、
今作007「慰めの報酬」のコンセプトと理解した。
リアルな007にするためには、悪党をリアルにしなければならない、
もはやソビエトは敵ではないし、宇宙を支配するIT企業ではバブル過ぎて、
今の風潮に合わない、脚本家はそこを良く考え、悪党を作り出した。
世界の経済網の中に小細胞の様に散在し、目立たない、MI-6などの国家
情報機関の中枢にまで入り込んでいる。
表向きはグリーン・プラネットという慈善団体であり、しかも地球環境保護を
唱えるNPOである。
なるほどね!この手の団体は日本にも結構ありますヨ、きれいごとばかり言って
寄付を集める胡散臭い集団だ。
そして狙いは石油でも鉄鉱石でもダイヤモンドでもなく「水」、地球温暖化の
現在、人間の生命に関わる根源的な「水」こそ資源というところがリアルである。
舞台は南米ボリビア、軍事革命勢力とこの慈善団体が結託し暗躍するのだ。
そして米国のCIAが絡むが、いやはやもはやCIAは治安の番犬ではない、
米国の利権獲得のために奔走する野良犬の如しであった。
このCIAの扱い方を見ると、欧州は米国をこんな風に見ていると判り興味深い。
さて007といえばボンド・ガール無くして映画にならない、
今回はボリビア人の謎の女カミーユ(オルガ・キュリレンコ)、
名前からウクライナ人らしいが南米美人を演じていた。
しかし驚くなかれ
ボンドガールは歴代、007と必ずベッドシーンを引き受けるものだが、
ななんと!最後までな・な・無しで済ませてしまった。
ふむ~ここまでストイックとは!
そうか、まだ007にとって前作で恋人を失って2週間目にしか過ぎない
ストーリー、あのボンドも喪に服しているのだろう
皆様明けましておめでとうございます。
ことしも熟年の立場から、勝手気ままな感想をお許しくださいませ。
さぁ本日から 2007年ですネ この年号にちなんで
映画史上最高の シリーズものといえば やはり「007」でしょう。
第1作目「007 ドクター・ノオ」公開邦題「007は殺しの番号」
は1962年ですから、なんと44年間の継続 作品も21作目となる
(ネバーセイ・ネバーアゲイン)を加えると 22作目になります。
私は第2作目「007 ロシアより愛をこめて」'63から封切りで観ました。
まだ紅顔の美少年だったころで、姉に連れて行ってもらったと記憶。
44年間も常に注目され、話題になり、シリーズが続いてきたのは、
主役を6代に渡り旨く世代交代をしてきたことや、人気出ない役者
(ジョージ・レザビー)は一作でお払い箱にするドライさと思う、
(ロジャー・ムーアは長すぎたが・・・)
それから毎回、旬な美しきボンド・ガールとのラブ・シーンを忘れずに
見せてくれることや、名車アストン・マーチンや 名銃ワルサーPPKとか
毎回おもしろい新兵器やボンド周辺グッズを紹介してくれるサービス
精神が、観客の支持を得、今まで続いてきた由縁と思います。
ボンドの交代は年齢にもよるが、映画が荒唐無稽になり過ぎた時に、
もぅ一度、原作本に戻るべく交代してきた。
日本ロケの「007は2度死ぬ」'67は忍者が出てきた時が潮時だった。
「007 ダイヤモンドは永遠に」'71で宇宙に飛んだときも潮時だった。
ピアース・プロズナンは中々良かったが、「ダイ・アナザーデイ」'02
で消えるアストンマーチンという荒唐無稽さに少々不安を感じていたが、
やはり交代の時が来てしまった。
さぁ新作「007 カジノロワイヤル」は正に原点に戻るべく「 ビギニング」
といえるものでしょう。007のイメージである(キザで女たらしで、
いとも簡単に敵を抹殺する)になる前のジェームス・ボンドを見事に
演じたのは(ダニエル・クレイグ)さんでした。
今までのボンドイメージとは遠い印象の人、スピルバーグの「ミュンへン」'05
でもほとんど目立たぬ地味な役者、007というよりはKGBの
殺し屋タイプの人、1968年生まれの38才ゆえ アクションも機敏だし、
素裸は見事な体脂肪ゼロ肉体労働者タイプ、女性必見の体。
この無骨な筋肉マンが ストーリーが進む内に、あの洒落て、スマート
なジェームス・ボンドに仕上がって行くのが良くわかる。
ボンドガールもいつもの肉感的なタイプでない繊細美人なフランス
女優(エヴァ・グリーン)さん、今回はいつもの気楽なS@X相手と
異なり、二人は本当の愛に陥る悲しいラブストーリーであった。
真の恋愛と真面目な渋目の007に仕上がり堂々の合格点です。
さて問題は、今後の007をD・クレイグさんがどう演じるかですネ
いつまでも真面目では「ボ~ン・アイデンティティー」になってしまう、
やはりジェームス・ボンドは飲む・打つ・買うのHな遊び人=不良
おやじでなければならない、果たしてこれを演じることができるか?
次回お手並み拝見といきましょう。
私も1つ歳をとって、チョイ悪おやじから、ただのHなおやじに成り
そうだ、このままでは誰も相手にしてくれなくなる、日々精進せねば
と気をつけております。ではでは今年も宜しくお願い致します。
投稿情報: 12:32 カテゴリー: 2006見た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
007といったら、
やっとこの頃、(ピアース・ブロスナン)の顔が浮かぶ様になった。
しかしジェームス・ボンドというと、まだ(ショーン・コネリー)の
顔が浮かんでしまう。これはしっかりと私のDNAに刻み込まれている
からだ。
ボンド・ガールといえば、「サンダーボール作戦」'65の
(クロディーヌ・オージェ)の顔が真っ先に浮かんでくる。
あと「ロシアより愛をこめて」'63の(ダニエラ・ビアンキ)かな。
初期は正統美人系が多い。
しかし新作「ダイ・アナザーデイ」のボンド・ガール、ジンクス
(ハル・ベリー)を見て思った、かっこいい!強い!
もうボンドのペットではなく立派なプロのスパイ。
これぞまさしく、歴代最強のボンド・ガールの称号を与えて良い。
「トゥモロー・ネバー・ダイ」'97 の(ミシェル・ヨー)とは武道で、
互角だろうが、ボデーで圧倒的に勝っているので歴代最強としました。
ハル・ベリーの「枕ことば」「同じ人間とは思えぬ」美しいボデェー。
今作はボンドとジンクスが出逢ってすぐなんてベッドインとなる
いくらなんでも!いつもよりもチョット軽いボンド・・と思ったが、
彼は14ヶ月もあの、忌まわしい北朝鮮に監禁されていたのだ、
「ふ~、いい女は久しぶりダ」と科白ってました。許してあげよう。
多分、二人は判るのです「同じ人種」だと!昔からボンドの相手には
カタギの女性は少ない、女スパイか敵の女殺し屋が圧倒的です。
危険な職業、いつ死んでも悔いない様に行動しておくのでしょう。
それから、他のボンド・ガール、ミランダ冷たい"女役の
ロザムンド・パイクの雰囲気はなかなか良いものがあった。
ラブシーンは堅物の優等生ミランダが、警戒していた、不良(ボンド)
への好奇心から、ベッドへ垂らしこまれた感じが良くでていました。
今回40周年20作目記念、祝長寿!初回時、私は未だ神童だった、
今只のオッサン。爾来凄い持続性だ、何故だろう?
主役の魅力は勿論だが、やはりボンド・ガールの話題性と
その色香でありましょう。
これは邦画の長寿作品「男はつらいよ」のマドンナと共通します。
毎回その時の旬な女優を登場させてましたネ。
そして最後は落ち着くところに落ち着くストーリー
「007」はゆったりラブシーンしながらハッピーエンド。
「男はつらいよ」は失恋してまた旅に出る。
この安心マンネリズムこそ、両作品に共通する長寿の秘訣
なのでしょう。
投稿情報: 05:55 カテゴリー: 2003 見た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
さて「007 ワールド・ィズント・イナフ」観ましたので一言
007シリーズは何と言っても「ゴールドフィンガー」、これを頂天にして、
マンネリ化を続けた。
(ロジャー・ムーア)ボンドに代わりで魅力半減した。
R・ムーアの「ムーンレイカー」に至って、遂に私は007を脱退しました。
・ ・・ (これファンに怒られるナ)
私が(ピアース・ブロスナン)彼を始めて観たのはフレデリック・
フォーサイス原作の「第四の核」でKGB非合法工作員を演じた時である。
誠に美男子かつ非情なロシア人を好演、しかし最後はMI-6に射殺される。
その彼がMI-6の007に出世するとは、縁は異なものである。
ボンドガールは味方ばかりでなく、宿敵や女殺し屋も多く「体を張って」
攻めてくる、そんな女達を受け入れた上で、けちらすには相当魅力ある
ボンド役者でなければならない。
男くさいがスマート、女に優しいが非情、そして、危機を乗り切る
「能力ある男」と観客を納得させねばならない。
そういう意味でP.プロズナンはボンド=007を復活させたと言えましょう
今回ボンドガールはあの(ソフィー・マルソー)あのアイドルも33才に
なった。ホント!大人の女の魅力益々となり画面に惹きつけられました。
投稿情報: 05:49 カテゴリー: 2000 見た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
マイクル・クライトンさんは相当稼いでいるのでしょうネ、
小説で稼いで、映画権を売って稼いで、映画を見た人が本を買って、
またベストセラー。原稿を書きながら頭の中は映像とドルで満杯で
ないかと推測。
さて「タイム・ライン」はあの「ジュラシック・パーク」のバリュ
エーションと思える作品。
ジュラシック・パークは太古の時代に、恐竜の血を吸った蚊が、琥珀の
中に閉じ込められまま発見された。その血からDNAを採取しクローン
化して恐竜を再生させたものだ。最近の目ざましいクローン技術を見るに
「ありえること」と妙に納得したものだ。
この「タイム・ライン」は今世紀最も期待される科学、量子ビーム
やナノ・テクノロジーいわゆる「量子テクノロジー」理論がベース。
量子力学では多宇宙が存在する=今の自分の世界に平行して、
無数の別パターンの世界があるという考え。量子の隙間を利用して
他の平行宇宙に移動する技術が開発されたというものだ。
今回移動する先は年代が少々ずれて14世紀の世界。
これは今までの時間を移動するタイムマシンとは全く異なる
理論であります。(別世界ゆえ、なにをしても歴史は変わらない)
開発したのはITC社、この会社のモデルは「マイクロ・ソフト社」と
思える。社長役(デヴィット・ジュリース)さんの顔はまぎれもなく
ビル・ゲイツだ。
この原作本の面白さは科学理論の説明やら、この技術を利用して
一儲けを計る企業家の損得勘定と、技術的な欠陥によるトラブルが
大変面白いのです。
本の中でも中世パートと現代パートがあり、私は現代パートばかり
読んでいた次第、しかし映画は現代を端折って中世の騎士道活劇
映画にした。監督さんは選択を間違えたと思います。
ジュラシック・パークの時はプロローグでしっかりとクローン技術を
アニメで説明したし、テーマパークの理想も説明した。
さすがスピルバーグ、SFの面白さを熟知していると思った。
このタイムラインの監督は、本の導入部のミステリアスな部分と
量子理論の説明を大幅カット、ただの活劇にしてしまったのだ。
主役のマレク助教授を演じたのは最近見た「トゥームレイダー2」
でララ・クロフトの恋人役(ジェラルド・バトラー)さんだった。
こちらの方がいい役で、もう忘れないだろう。
ラストでつくづく思った。男はロマンチストである!
最近見た「ソラリス」でも、この「タイム・ライン」でも
男は女のために地球も時代も捨てることができるということが・・。
投稿情報: 04:37 カテゴリー: 2004 見た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
この1月に所用で米国ボストンに行ったせいか、ボストンが舞台の映画が
気になります。という訳で現在2011 2月上映中映画「ザ・タウン」に一言。
ボストンは京都と姉妹都市の古い町で、独立戦争縁の建物が多々ある町、
さらに有名なハーバード大学やマサチューセッツ大学工科大学があり、
私たちの一般的なボストンのイメージは静寂な古都の学園都市であります。
しかしボストンの北東の一角にあるチャールズタウンは世界一強盗犯罪の
多い町なのです。その町こそ、この映画の舞台「ザ・タウン」であります。
この吹き溜まりの地域に生まれ育った4人の男は銀行強盗や現金輸送車襲撃
を繰り返していた。大胆な犯罪であるが首尾よく行くのは、リーダー格に
綿密な計画を立てるダグ(ベン・アフレック)がいたからだ。
彼らが銀行を襲い逃走するために、やむなく人質にしたが殺さず解放した
女支店長が同じ町に住んでいたことが判り、女を監視せざるを得なくなった。
ダグは監視している内に、何と!その女(レベッカ・ホール)と恋に落ちて
しまったのだ。彼はもうそろそろ引き際、足を洗って女とどこかで暮したい
と考えた。しかし仲間は許さないし、仕業師のボスから脅しも入った。
しかたなく彼はこれが最後の大仕事と決意し、あの松坂大輔のいる
「ボストン・レッドソックス」の球場の金庫室を襲撃する計画に乗った。
しかしその計画を知ったFBIとの壮絶な銃撃戦が始まった。
すぐに切れる荒っぽい仲間ジェム(ジェレミー・レナー)がこのタウンに
住むものの性格とあわれな末路を見事に演じていた。
そして仕業師のボス(ビート・ポスルスウエイト)の顔はギャング映画を
正にドキュメントにする迫力がありしたネ。しかし彼はこの2011年1月に
ガンでこの世を去った、惜しい役者を亡くしました。合掌
この映画を観て思った、この映画の主演と監督をしているベン・アフレック
は私の最も好きな映画の一つハードボイルドギャング映画「ヒート」1995を
相当意識しているな!と、あの監督はギャング映画の大御所マイケル・マン、
ギャングはロバート・デニーロ、ロス市警はアルパチーノの凄い映画だった。
この時のデニーロの恋人はこの映画の女にも似ている感じがしましたヨ。
ピート・ポスルスウエイト
投稿情報: 06:34 カテゴリー: 2011観た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
2011年1月、米国ニューヨークに行ってきました。
街中のタクシーは全てイエロー・キャブが独占、お世話になりました。
と言う訳で「タクシー・ニューヨーク」’05 に一言。
いやぁ~まったくのオバカ映画とは、
この映画「タクシー・ニューヨーク」のことを言うのでしょうネ。
とにかく、まぬけでドジな亀、否!刑事( ジミー・ファロン)が銀行
強盗団を逮捕しようと出動するたび騒動が起こるのだ。強盗の被害より、
追跡被害の方が大きくなるのはこの手映画の定石であります。
追跡する車はNYの名物イェローキャブ・タクシー、しかしこのタクシー
は只のタクシーではない、チュ~ンアップしレーシングカー仕立なのです。
それもそのはず、この車の女ドラーバー、ベレ(クイーン・ラティファ)
は筋金入りのカーキチでスピード凶、将来の夢はカーレーサーであった。
そして頼りになる姉御として下町の仲間に愛されていた。
観客はマヌケな刑事にイライラし、女のドライバー振りにスカッとする
ニューヨーク市街を暴走しながら、只ただ二人のバカげた繰り返しで
この映画は終わるのです。
全く必然性はないのだが、どういう訳か4人の銀行強盗団は皆超かっこよし
のスーパーモデル、そのリーダー( ジゼル・ブンチェン)はあのデカプリオ
の元恋人だった女性、皆、全身にむだ肉が無いせいか、強盗振りはテキパキ
して気持ちがよかった。
おまけに刑事は少々マザコンである、彼のママ(というより、おばぁさん)は
陽気で少々アル中気味らしい、しかし妙に存在感があった。後で判ったのだが、
そのはずだ!あ・の・あ・の!(アン・マーグレット)、プレスリーの相手役
「ラスベガス万歳」’63!!なつかしい~、ああボクのイタセクスアリス
「東京タワー」のエンディングはどういう訳かパリのエッフェル塔、
そのパリの下宿屋のおばさんが何と!(ミレーヌ・ドモンジョ)であった。
いやぁ~ドモンジョといい、アン・マーグレットといい、変り果てたとはいえ
このところ、我が青春時代の恋人との再会を喜んでいる次第です。
投稿情報: 05:53 カテゴリー: た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
こういうこともあるのでしょうか
だいぶ前に「たそがれ清兵衛」を観ていたのです。
元々藤沢周平の大ファンであり、小説にもはまっているのですが
この映画を観終った後、しばし動けず、あまりの感動!に
なかなか筆を執れず、投稿せぬまま過ごしておりました。
山田洋二監督「初めての時代劇」と銘打っていたが、そんなフレーズ
より、山田監督が初の「藤沢周平」作品ということに驚いた。
山田洋二の映画世界は下町庶民の生活を人情たっぷりに画く事だ。
その代表は「男はつらいよ」であった。
一方藤沢周平は時代小説の第一人者であるが、いわゆる英雄物ではない
江戸市井の人々や下級武士を扱うことが多い、文章は当時の人々の
生活を感じ、心情が見事に伝わってくる。これは山田洋二と共通する
世界である。もう何本か創っていても不思議ではないのだ。
何年か前、NHKで「三屋清左衛門残日記」が連続ドラマ化された。
清左衛門(仲代達矢)は隠居生活していたが、御家騒動に巻き込まれる内容。
隠居の日常は、かわゆい嫁と色っぽい「涌井」の女将に好意を寄せられ
ユーモアもあり面白かった。親友佐伯熊太(財津一郎)が好演したと記憶。
さて本映画、舞台は庄内の海坂(うなさか)藩、この藩は藤沢作品の
殆ど定番である。作者自身の生まれ故郷山形で小藩ということになっている。
シーンは雪の中を棺桶担いで葬儀からはじまる。遠くに美しい雪山が見える
これでこの映画と海坂藩のイメージは見事に固まったのだ。旨いですワ
妻に先立たれた清兵衛(真田広之)は幼い娘二人とボケた母を養う
下級武士である。武士とはいえ相当貧乏、しかしそんな生活でも
子供たちの成長を見守る事に幸せを感じているのだ。
冬の夜、暖を囲み、虫かごの内職をしながら 不憫な娘たちに問う・・
「お前がた、おかはんがいねと寂しいか。」・「おとはんがいてはるさけ、
寂しくね。」この父娘の会話で、私の涙腺は決壊した。これは反則業です。
さて、仲間に馬鹿にされていた下級武士だが、小刀の使い手であることが
判り、謀反人を討ち取る藩命が下ってしまったのだ・・・・・
(宮沢りえ)が清兵衛の幼馴染の朋江を演じた。
当時の武家の社会は女にとって,自分の思い通りにはならぬものだ
辛い境遇だが、明るく生きる朋江は誠に美しい。
清兵衛の出陣を助けるが、襷がけをして、身を整えさせる手際の良さは
正に武士の妻である。
清兵衛との心の交わし、さりげないしぐさ、これで十分男女の情を表現
エロチックの域でもある。そうか彼女も来年で30になるのか・・・・
あの辛い相撲取りとの試練を乗り越え、あの辛さを全て演技の糧に
したのだろう。偉いヨ!りえちゃん
朋江、涌井の女将みさ、嫁の里江、藤沢周平に出てくる女は皆
よろしいです。小説とはいえ、誠に羨ましい世界であります。
投稿情報: 11:10 カテゴリー: 2002 見た映画, た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
これは物語ではなく事実の映画化である。
驚くことだが、4人の子供たちは出生のときに届出がされてなかった。
父親が皆異なり認知もされてない、しかしそんなことは問題ではない。
問題は、生まれたことになってないので、日本という社会には
存在してないのだ。よって受けるべき恩恵を受けられない。
つまり4人の子供は誰も学校に行ってなかったのだ。
あげく母親はある日以来アパートに帰らなくなった。
置き去りされたのだ。
母が残した僅かな金も底を尽いた。電気もガスも止められた。
相談所に行けば、きっと兄弟姉妹はバラバラに離されるだろう。
そう思った長男は、何とか自分たちで生きて行こうと決心する。
アパートの1室で誰にも知られずに幼い兄弟はひっそりと暮らしていた。
長男 明 (12才)長女 京子(9才)、次男 茂(7才)、次女 ゆき(4才)の4人。
父に捨てられ、また今、母にも捨てられた 明少年、ひにくれたり、
やけになっても不思議でない、まだまだ遊んでいたい年齢だ。
しかし長男として妹弟が生きて行くため苦心奔走する。
しかも妹弟に対して誠に温かいのだ。
画面を見て思った、なんて、めんこい子供たちなのだろう!
特に明くんは、あんな境遇なのに本当に素直な子なのだ。
思わず、我が家の子供たちが幼かった13年前を思い出し、
映画の子供は自分の子供と思え、すっかり感情移入した。
可哀相なシーンは多々あった、しかし今回は涙が全く出ない。
身勝手な大人達に対する怒り、また自分の中にある冷淡さへの
自責が膨らんで体に力が入って、力が入ってガチガチである、
そして胸がズキズキと痛むのだ。
明を演じた柳楽優弥(なぎら ゆうや)君が、日本人初カンヌ
映画際主演男優賞という、大変な快挙をなしとげた。凄い!
演技でないピュアな自然さが評価されたとの由だが、私には
大人たちの自責の念がそうさせたのではないかと思われた。
1988年に実際に起こった「西巣鴨子供置き去り事件」の映画化
であるが、映画パンフレットによると、その後の調べで
兄は計らず、死なせてしまった末妹を山中の雑木林に埋葬し、
その後電車に乗って何度もお墓参りに出かけていた事が明らかに
なった。との記を読んだ瞬間、涙が溢れ止まらなくなりました。
監督・脚本 是枝裕和 母YOU(ゆう)長男 柳楽優弥
(やぎらゆうや)長女 北浦 愛(あゆ)二男 木村飛影
(ひえい)次女 清水萌久子(ももこ)
投稿情報: 21:19 カテゴリー: た | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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