これは物語ではなく事実の映画化である。
驚くことだが、4人の子供たちは出生のときに届出がされてなかった。
父親が皆異なり認知もされてない、しかしそんなことは問題ではない。
問題は、生まれたことになってないので、日本という社会には
存在してないのだ。よって受けるべき恩恵を受けられない。
つまり4人の子供は誰も学校に行ってなかったのだ。
あげく母親はある日以来アパートに帰らなくなった。
置き去りされたのだ。
母が残した僅かな金も底を尽いた。電気もガスも止められた。
相談所に行けば、きっと兄弟姉妹はバラバラに離されるだろう。
そう思った長男は、何とか自分たちで生きて行こうと決心する。
アパートの1室で誰にも知られずに幼い兄弟はひっそりと暮らしていた。
長男 明 (12才)長女 京子(9才)、次男 茂(7才)、次女 ゆき(4才)の4人。
父に捨てられ、また今、母にも捨てられた 明少年、ひにくれたり、
やけになっても不思議でない、まだまだ遊んでいたい年齢だ。
しかし長男として妹弟が生きて行くため苦心奔走する。
しかも妹弟に対して誠に温かいのだ。
画面を見て思った、なんて、めんこい子供たちなのだろう!
特に明くんは、あんな境遇なのに本当に素直な子なのだ。
思わず、我が家の子供たちが幼かった13年前を思い出し、
映画の子供は自分の子供と思え、すっかり感情移入した。
可哀相なシーンは多々あった、しかし今回は涙が全く出ない。
身勝手な大人達に対する怒り、また自分の中にある冷淡さへの
自責が膨らんで体に力が入って、力が入ってガチガチである、
そして胸がズキズキと痛むのだ。
明を演じた柳楽優弥(なぎら ゆうや)君が、日本人初カンヌ
映画際主演男優賞という、大変な快挙をなしとげた。凄い!
演技でないピュアな自然さが評価されたとの由だが、私には
大人たちの自責の念がそうさせたのではないかと思われた。
1988年に実際に起こった「西巣鴨子供置き去り事件」の映画化
であるが、映画パンフレットによると、その後の調べで
兄は計らず、死なせてしまった末妹を山中の雑木林に埋葬し、
その後電車に乗って何度もお墓参りに出かけていた事が明らかに
なった。との記を読んだ瞬間、涙が溢れ止まらなくなりました。
監督・脚本 是枝裕和 母YOU(ゆう)長男 柳楽優弥
(やぎらゆうや)長女 北浦 愛(あゆ)二男 木村飛影
(ひえい)次女 清水萌久子(ももこ)
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