私にとって2016年の上半期に観た映画のNO 1は何かと聞かれたら
迷わず「ブリッジ オブ スパイ」と答えます。
これほど面白く且つ、これほど旨く作られた映画は見たことが無いほどの秀作だ。
主役は現役最高の名優(トム・ハンクス)、そして監督は現代最大の巨匠
(スティーブン・スピルバーグ)ですもの、作り方が旨いはずだ、本当に面白い。
私も子供心に、飛行機ファンゆえに、ロッキードU-2型撃墜事件を知って
いたのだ。時は1960年米ソ冷戦の真っ只中、アメリカ偵察機がソ連領空
でミサイルで撃墜され、パラシュート脱出した飛行士はソ連軍に逮捕された。
米ソ間の緊張が高まったが、1962年2月、ベルリンのグリーニッケ橋上で
ソ連のスパイと交換され、パイロットは無事帰国できたのだ。
この映画は交換相手であるソ連のスパイ・アベル大佐が米国内で逮捕され、
裁判に掛けられ、スパイ交換されるまでの実話を映画化したものである。
まず驚かされるのは、1960年当時のアメリカの町並みやファッション・
風俗が丁寧に再現されていること、ベルリンに壁が作られ東西ドイツが
分断される当時の騒然とした様が非常にリアルに表現されていることだ。
1957年ニューヨーク、ソ連のスパイ、アドルフ・アベル(マーク・ライランス)
が逮捕された。目立たぬ地味なオジサンである。(これが本当のスパイという
ものだ、ダニエルC・ボンドの如く格好良く目立つことなどありえないのだ)、
民主主義国家米国を示すため、一応スパイにも裁判のための国選弁護士
が選任された。その人はジェームス・ドノバン(トム・ハンクス)であった。
彼は弁護士の良心と強い精神の持ち主であった、よって意外にも単なる
形式でなく本当の弁護を開始したのだ。
そもそもスパイは軍人と異なり、薄汚い裏切りの存在である、即死刑でも仕方
ない存在である、しかも当時全米・国民がソ連の核ミサイルを恐れていた。
そんな者を弁護するドノバンと家族は国民から憎しみを受け、危険な状態で
あった。事実、家に銃弾を撃ち込まれた。
白状もせず、2重スパイや寝返りを拒否するアベルの軍人魂に対して、
ドノバンは敬意の念を抱いていた。一方危険と圧力の元で弁護を貫く
ドノバンに対してスパイはしみじみと言った。
貴方は「ストイキー・ムジック(不屈の男」だと・・。
ドノバンは非公式の場所で裁判長に提案した、死刑にせずに生かしておけば
いずれ、ソ連につかまったアメリカのスパイと交換できると・・・これが功を奏した!
判決は30年の禁固刑、死刑が免れたのだ!しかし全米は非難轟轟となった。
果たしてドノバンの予測の通り、2年後スパイ同士の交換が起こった。
しかもその交渉と交換の役目に民間人であるドノバンが使命されたのだ。
壁が作られ騒然とする東ドイツ・ベルリンに向かった・・・・・
いやぁ~ 弁護士ドノヴァンの不屈とユーモア性を(トム・ハンクス)が見事に
演じた。そしてスパイ・アベルの知性と静かなる達観ぶりを(マーク・ライランス)
がこれ又見事に演じた。これで彼はアカデミー助演男優賞を受賞した。納得!
脚本はコーエン兄弟、撮影はヤヌス・カミンスキーですもの「シンドラーズ・リスト」
「ミュンヘン」「プライベートライアン」の実績、リアル映像が撮れるはずだ。
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