よく見ろ、日本人(ニッポンジン)これが戦争だ!」
と恫喝する中井貴一のシーンがテレビで何度も放映された。
またチラシに防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊が全面協力とある。
これが気になって・・・・
とうとうこの映画「亡国のイージス」を観ることにしました。
歴史的に発足から現在に至るまで「自衛隊」は国民から冷ややか
に見られてきました。「日本国憲法違反の代物」として扱われ、
特にマスコミや映画界にとり、否定的な対象であったと思う。
唯一例外、自衛隊に敬意を表してきたのは東宝の「ゴジラ」だった。
国民を避難させ、ゴジラに踏み潰されながらも勇猛果敢に闘う存在
だった。子供心に思ったものです、「ありがとう自衛隊さん!
貴方達がいなければ被害がもっと大きかったでしょう。と」
今まで冷たく否定的な映画界に自衛隊が全面協力するとは・・・
よっぽど自衛隊贔屓の映画内容なのかと思ったら、何と海上自衛隊
の最新鋭イージス護衛艦が日本政府に謀反を起こす内容だった。
第2次世界大戦の反省から自衛隊は文民統制で厳しく規制されている
暴走を防ぐため勝手な行動は出来ない、あるいみガンジガラメな法
システムである。その自衛隊が謀反を起こす映画とは自衛隊の信用
にも関わる事、それゆえ画期的な映画である。
ギリシャ神話の無敵の盾「イージス」から拝命したイージス艦
「いそがぜ」は最新鋭の防空システムを搭載した無敵の戦艦、
正に専守防衛を本旨とする自衛隊の象徴的存在である、それが
謀反を起こしたとすれば国家的大事である。
反乱の首謀者はイージス艦の艦長(寺尾聡)であり、反乱兵は
彼を慕う上級士官達であった。そして北朝鮮工作員(中井貴一)
とその部下達が参画していた。
艦長は政府に宣戦布告した「本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内
に設定されている、その弾頭は通常に非ず。」簡潔ながら恐るべき布告。
しかし、そのイージス艦の船底に叩上げの海上自衛官先任伍長
(真田広之)が一人潜んでいたのだ。選任伍長と反乱軍との壮絶な
戦いが始まった。これぞ映画!日本版ダイハード
蓋し!ふむ~ハリウッドアクション映画ならこれで良いのですが・・
真面目実直な自衛官が国家に謀反を起こすとなると、かなり強い
思想と信念が無ければならない、また彼らの目的が達せられたと
しても無事に済む訳無く、正に死を覚悟の確信犯であるはずだ。
しかしそれが・・・・
相当の覚悟を決めているはずの上官が簡単に変心するし
2~3人の人間と一千万人の命を天秤にかけてオロオロする
この映画の致命的欠点は
日本国の国家としてのありよう、国防の本旨、自衛隊のあるべき姿、
日米安保の欺瞞、場当たり政治に翻弄されている自衛隊の実情など
この反乱の理由と主旨が映画の中で十分の述べられていない事だ。
結果、私怨で気が振れた年寄り艦長と義理で引きずられた部下達
の反乱にしか見えない。よって艦長はじめ皆、いつも迷っている。
これでは自衛隊が起こした反乱アクション映画になりませんヨ。
1970年11月25日
三島由紀夫の市ケ谷自衛隊占拠の如く、毅然としたサムライ確信犯
を貫けば本当にリアルで面白いアクション映画になったはずだ。
まぁ~それにしても何故、防衛庁が全面協力したのか?
映画では十分というより全く述べられなかったが、私が思うに
原作にあるイージス艦の「反乱の理由」と「政治に翻弄され続ける
自衛隊の不満」こそ防衛庁と自衛隊の本心であるからだと推察した。
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