アメリカ映画を見るたびに、いつも思うのだが、
アメリカは田舎の方が恐ろしい。あまりにも領土が広すぎて、
まだ人類未踏の地がありそうだし、特に南部の砂漠には、
殺されて埋められた死体が多々あるんだろうナ~。
という訳で、「ノーカントリー」に一言。
テキサスの砂漠に多数の死体が転がっていた。多分、麻薬(ヘロイン)
取引の内輪もめで、マフィア同士の相打ちになったのだろう。
偶然、その現場に地元の男モス(ジョシュ・ブローリング)が行き交った。
そして代金200万ドルの入ったトランクを発見する、横取りすれば大金持、
しかし恐ろしいマフィアから追われる身になる。
彼は逃げ遂せると思った、なぜなら彼は戦列のベトナム戦争から帰還した
軍隊経験があったからだ。
マフィアの金をくすねて追われる映画は多々ある、マフィアは執拗だ
しかも残忍、裏切り者には報復と見せしめのため女房、子供、親、友人
までも殺す。この手の映画で思い出すのは「トゥルーロマンス」'93だ。
これはあまりにも見事に逃げ遂せる映画だったが、果たして今作品
「ノーカントリー}はどうなのか?
ホント恐い映画、観ている間、体が固まり唾も飲めない状態になった。
それは追う殺し屋(バビエル・バルデム)の形相と行動があまりにも
特異だからだ。お下げ髪型でギョロメ、無表情、彼独特の殺しの哲学を
持っていて、また!これが恐いのだ。
武器はコンプレサー(高圧縮空気バルブ)で人間の体に風穴を開けて
殺するのが 何とも異様だ。
獲物は逃がさない、手段を選ばない、目の前に障害となれば、関係無い人
まで殺す。この映画の主題は巻き添えを食って殺される人達の哀れかも
しれない。これには雇主のマフィアのボスも困り果て、彼を始末すべく
新たな殺し屋を送った。
さらにこの事件を追う地元の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)がいた。
これら三者の追跡劇が淡々・粛々と進行するのだ。
そして意外なる結末!なんなのこれ?コーエン兄弟監督さん!
「トゥルーロマンス」の様な意外性ある結末を期待していた私にとって
想定外の腰砕け、これこそ現実と言いたいのだろうが、これは反則業で
ないの?
映画の原則は起・承・転・結だが、この映画は起・承・結、その「変則性」
と殺し屋の「特異性」が評価されたのか? アカデミー賞、最優秀作品賞、
最優秀監督賞(コーエン兄弟)、最優秀助演男優賞(バビエル・バルデム)
そして最優秀脚色賞(コーエン兄弟)と4部門を独占した。
印象に残るシーン、血だらけで逃げるモス、血だらけで傷つく殺し屋が、
通りすがりの若者から服を買うシーンが二つある、売った連中の欲得振りが
妙にリアルであった。これこそコーエン的リアルと思いました。
さすがアカデミー作品 観ておくべきですゾ。
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