先日NHKで「スパイ・ゾルゲ最後の暗号電報」なる番組があった。
サブタイトルには「新資料から明かす国際スパイ事件」と付してある。
先般、篠田正浩監督の「スパイ・ゾルゲ」に投稿した縁もあり、
追申を御許し願いたい。
TVによると驚いたことに「ゾルゲ」は現ロシアでは英雄になっていた。
モスクワには「ソルゲ通り」があり、その通りにゾルゲの銅像が建ち、
中央軍事博物館には英雄としてその偉業が紹介されているのだ。
「スパイ」というのは敵も味方も歴史的英雄に成らぬものである。
ましてや当時のソ連はあのスターリン時代で権力闘争の粛清と殺戮
が繰り返され、今でも歴史的に誰が良いのか悪いのか判らないのだ。
篠田映画でも、スターリンはドイツ人ソルゲを2重スパイと疑い、
モスクワに住むソルゲの妻は逮捕され、悲惨な扱いを受けた。
そんな彼が英雄となったのは、後の歴史的再評価で彼の情報が
大変な価値あるものと認められたからである。「その価値」とは何か?
第2次世界大戦の欧州、ナチスドイツはポーランドを占領し、パリを
陥落させ、そして100万の軍をソ連に侵攻させた。モスクワまであと
100kmに迫り、スターリンは風前の灯火であった。
「日本の対ソ参戦はあるのか?」極東で日本と対峙していたソ連は
この情報が欲しい、ゾルゲは尾崎秀実(ほつみ)を使い、日本政府の
情報を得た。日本は石油資源を求めて南進作戦(東南アジア侵攻)を
選択、よって北進「ソ連参戦は無い!」と確信したのだ。
昭和16(1941)年10月4日、最後の暗号電報を送った。その情報により、
ソ連はシベリア師団を極東からヨーロッパ戦線に大移動させ、
急転直下、ドイツ軍を大敗退させたのだ。この戦はヒットラーの
野望を挫折させ、正にドイツの降伏を決定付けたのだ。
一方南進した日本は、米国と太平洋戦争に突入、原爆を落とされ、
そして敗戦に至る。なるほど正に「雌雄を決する情報」であった。
「ターミネーター3」’03を見たばかりゆえ、フッと思ったのだが、
1941年へ日本製ターミネーターを送り込み、ゾルゲの電報を阻止
したらどうなったのだろうか?
ソ連は当然崩壊しただろう、結果米国は日独と停戦、太平洋戦争に
ならず、原爆も落ちなかった。そんな旨い結果になったかもしれない。
それとも、逆に戦争が長期化&拡大化し米国の大量核爆弾を受け
日本は壊滅してしまったのだろうか?
映画の楽しみは「愛だ、恋だ」「スリルだ、サスペンスだ、アクションだ」
の他、この様に歴史的な事を改めて考えるができますネ。
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