藤沢周平原作、山田洋次監督の時代劇となれば、私の期待を
裏切ることはあり得ない。「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」
そ・そして今作「武士の一分(いちぶん)」が上映された。
藤沢周平が取り上げる人々は江戸市井の人々や下級武士であり、
決して「英雄・豪傑侍もの」ではありません。
当時の貧しく、倹しい侍の生活ぶりが見事に描かれています。
あの「たそがれ清兵衛」さんの給与は50石だったと記憶、
今回の主役、三村新之丞(キムタク)さんは同じ海坂藩で
30石ゆえ、もっと貧乏だ。
新之丞はお殿様の毒見役、万一、食事に毒が一服盛られていれば
殿様の身代わりにあの世に行く、忠義とはいえ因果な役目だ。
果たして、貝の毒に中(あた)り生死をさ迷ったあげく、一命は
留めたものの視力を失ってしまった。
殿を守らねばならぬ侍が、人の世話にならねば何もできない立場
になった時、自刀を決心する。しかし思い留らせ、献身的な世話
をする愛妻、加世(壇れい)がいた。
いやぁ~藤沢周平ものに登場する女は、いつも良いナ~
三屋清左衛門残日記の息子の嫁、涌井の女将、たそがれ清兵衛
の朋江、そして今作の妻加世さんが、またいい~んですワ。
(壇れい)さんをはじめて見ました。宝塚出身との由、その新鮮さの
ゆえか本格派美人のゆえか、慎ましい役のせいか、すっかり虜になり
ました。「たそがれ」の朋江(宮沢りえ)に勝るとも劣らない好演だった。
さて、この映画の敵(かたき)役は藩の上役・島田藤弥である。
三村家の困窮に付け込み、加世の苦悩に付け込んで甘い甘い汁を吸う
悪い奴、演ずるは歌舞伎の名代(坂東三津五郎)である。
彼も梨園の御曹司の例にもれず大の女好き、確か前妻・近藤サ@さん
とすったもんだの再婚婚・離婚劇を演じた御仁、正に役を自で行ける
適役ゆえ、本当に旨い!よって私が終始共感(シンクロ)したのは
坂東三津五郎の方だった。
人妻が(壇れい)ならば、邪悪な気も起ころうというものだ。
武士の封建制度が判り、周りの人情が判り、しっかりとチャンバラ
もある堂々たる時代劇、
話の結末は、なんだか「現代劇しちゃったかナ」と感じたが、
現代社会「ワーキングプア格差社会でも希望を捨てるな」という
山田洋次監督の温かいメッセージが込められていると思いました。
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