休みが終わり、2学期が始まった9月1日に中・高の女生徒が
マンションから飛び降りた。また公園のトイレで首をつっていた男子高生
など全国で自殺のニュースを聞いた。もはや新学期の生徒の自殺は
社会現象なのだ。
こういう事件を聞くたび、2015年の映画「ソロモンの偽証」を思い出す。
「ソロモンの偽証」は(宮部みゆき)が2002年から2011年に掛けて
「小説新潮」に連載された作品で、文庫本も6巻からなる長編推理
小説として発行された。藤田新策氏の表紙カバー絵がとても良かった。
この長い長い小説を2015年に何とか!映画化した監督こそ、
(成島出 なるしま・いずる)である。彼の今までの代表作は「八日
目の蝉」(2011)と、連合艦隊司令長官山本五十六(2011)がある。
宮部みゆきの小説や映画は「理由」(2004)の時もそうだが、事件の
顛末や警察の犯人探しというより、全ての関係者の性格をドンドン
掘り下げ、履歴書小説になってしまう、それが面白さゆえ、カットは
許されないのだ。結果!前編・後編の2回分けの上映となったのだ。
1990年12月のクリスマスイブの夜、中学2年生の男子が学校の屋上
から転落死した。警察は自殺と断定した。生徒は不登校児であり、
イジメが原因かとの疑いもあったが、明白にならぬまま収束しつつあった。
しかしほどなく告発状が届いた。学校の札付き不良生徒3名が彼を
突落したのを目撃したというものだ。学校はこれを公開しなかったが、
マスコミに知れることとなり、学校も世間を大騒ぎとなった。
しかし警察は当時の現場状況から殺人はあり得ない、告発は嘘で
イタズラと断定した。ではいったい誰が告発したのか? 同校の生徒
の仕業と推測された。
そんな時同クラスの女の子が交通事故死した。彼女は告発者か?
自殺したのでないか?否!犯人に殺されたのだとウワサも出る始末。
この一連の騒ぎの責任を取り、担任の女教師も校長も辞任していった。
同組の生徒は3年生となり、いよいよ受験勉強である、しかし生徒達
の心に事件のトラウマともやもやとした自責の念が残ったままであった。
この学校では卒業記念にテーマ発表が恒例になっていた。学校側の
反対を押し切り、生徒たちは事件の真相を知るべく「学校内裁判」を
テーマとすることを決めた。
被告は告発状に殺人者と記された生徒、検事も弁護士も裁判官も
陪審員も皆生徒、証人は要請に応じた関係者が出頭した、傍聴人
は父兄やマスコミであった。場所は学校体育館で8月15日から
始まり20日に結審の6日間であり本格的である。
いやぁ~面白い!事件の顛末を生徒たちの訴訟ドラマ仕立てで
解明して行くなど今までに無い発想である。
「イジメ」が恒常、蔓延している学校、イジメる理由があり、イジメられ
る苦しみの実態が明らかになっていく、生徒と先生と父兄と学校組織
と教育委員会のそれぞれの対立が浮き彫りになる。
小説の中の言葉が印象的であった。
「14歳はみな自意識過剰でぶつかり合う、不安定な心は優越感と
コンプレックスのカクテルだ。傷ついたり、傷つけたりして過ごす、そして
満身創痍になって抜け出し大人になって行くのだ。」
学校は社会よりも辛いのかもしれないネ!
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