「人生の特等席」原題「Trouble with the Curve カーブに難あり」
に一言。
映画はプロローグで、その映画の素性が判るというが、正にその通りだ。
この映画はトイレのシーンから始まった。なかなか出ない、勢いがない、
キレがない、男はイライラしながら小便をしていた。 男にとって
「加齢との戦い」の象徴的なシーンだ。前立腺が相当弱っているのだ。
男は球場でピッチャーの球筋を凝視していた、しかし肝心なバッター
ボックスが雲って見えないことに気が付いた。家でも、椅子やテーブル
の角に足をぶつけることが頻繁になった。
友人の医者に診てもらった、緑内障で放置すると失明の恐れありと診断、
大病院に行けと命じられたが、「俺は忙しんだ、ここに来なかったこと
にしてくれの」一言で済ませた。典型的なやっかいで偏屈な老人である。
男の名はガス(クリント・イーストウッド)、大リーグのスカウトマン、
長年にわたり高校生や若者の野球の能力を見極め、数々のスターを輩出
させてきたベテラン・スカウトプロである。
スカウトにとって視力の衰えは致命的であるが、長年の経験から、直感
やフォーム、バットの音やミットに収まるボールの音で判断出来たのだ。
NYで忙しく弁護士をしている唯一の肉親、娘ミッキー(エイミー・
アダムス)が心配しやって来た。よけいなお世話だ、帰れ!と言う、
同情されたくない父に同行して、二人でスカウトの旅がはじまった。
二人の間にはわだかまりがあり、反発をしながら旅をする父と娘、
小さいころ父のスカウト仕事にふっ付いて全国を廻り育った彼女ゆえか
野球というものを知り尽くしているのが、この映画の面白さである。
正に娘を持つ父親必見の映画ともいえる。
アメリカと言えば大リーグ野球、アメリカ映画と言えば明るい太陽、
広大な大陸、そこをを旅するロード・ムービーは明るく楽しい、田舎
のモーテル食堂で食べるアメリカンブレックファーストのベーコンと
2エッグは美味である。正直この朝食を見ると米国に行きたくなる。
監督はイーストウッドを知り尽くした弟子の(ロバート・ロレンツ)さん。
1930年生まれC・イーストウッドは83才でまだ主役を張っている。
「グランド・トリノ」(2008)に次いで「加齢を活かした」映画テーマだが
作る人も見る人も皆高齢社会なのだから、はまだまだテーマは沢山ある。
これならイーストウッドさん、引退する暇はありませんネ
コメント
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