私が幼い時、よく親に連れられ映画に行ったものだが、大きく分けて
三つの系譜の映画があった。一つは東映の時代劇、二つ目は東宝の特撮、
そして三つ目は松竹の文芸ものであった。
当時思ったものだ、松竹の映画はなんと退屈で面白くないものか!
よって映画に行きたいけど松竹はイヤダ!と駄々こねた記憶がある。
よって好きな監督は円谷英二、黒澤明、深作欣二、マニアックに
石井輝男など、嫌いな監督として小津安二郎とか木下恵介であった。
それがネ、長じるに及んでDVDで小津作品や木下作品を見ると感動し、
その後継者といえる山田洋次監督を好んで見るに変化して行った。
そして今!小津監督の「東京物語」(1953)は世界の映画監督358人が
選ぶ2012年度ナンバー1作品に選ばれたのだ。
やはり人間の中核は家族であり、家庭の日常の出来事を淡々と画くこと
こそ永遠不滅の映画のテーマということが証明されたのだ。
「東京家族」(2012)は山田洋次監督50周年記念作品だが、このタイミング
で小津世界の後継者といえる山田洋次が「東京物語」のリメークを作る
ことは意義あることと思います。
オリジナルの1953年から2012年に置き換えたものだが、脚本に大きな差は
無い、田舎に住む老夫婦が、東京に住む息子と娘の家庭を訪ねる話である。
東京物語は日本の大試練である戦争という傷が垣間見える、東京家族は
東日本大震災の津波と原発事故を現代の日本の試練と傷として表現した。
「東京物語」は何といっても(笠智衆)の枯れた父親ぶりと、戦争未亡人
(原節子)の美しさに尽きる、原の部分は白黒映画の中でカラーのように
映えていたと記憶。
東京家族の父親(橋爪功)さんはTVでシニカルな中年役が多いせいか、
とても枯れた老父には見えません、まだまだ生生現役ですネ
次男(妻夫聡)の恋人(蒼井優)は両親から「とても感じがよい人」と
言葉を引き出すほど好感度! ほんと「息子の嫁に」と実感した次第。
そしてなんと言ってもこの映画の中核は母(吉行和子)だろう、旧作の母
を忠実に再現しているばかりでなく、かつ私の、否!全ての人に自分の母
を思い出させる程の「母」なのである、あらためて役者の凄さを感じた。
親、子、男、女、老人 中年、若者 それぞれの立場で異なって見れます。
本当に良い映画ですヨ
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