いい映画とは「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」2012
の様な映画をいうのでしょうネ。
3.11 東日本大震災から、やや1年4ヶ月、大津波のニュース画像や、
復興を目差す人たちの頑張る姿が日々、ニュースで放映されている。
しかし肉親を失い悲しむ遺族の姿や、残された幼い子供の姿はとても、
とても、TVで流したり、ましてや映画化など出来るものではない。
9.11米国同時多発テロがあったのは2001年ゆえ11年の年月が経った。
9.11に関する映画といえば(マイケル・ムーア)の「華氏911」'04
があった。アメリカに何ゆえこんなテロが起こったのか?その背景、
(ブッシュとビン・ラディンとアラブ王族の密接な関係)を糾弾した。
「ユナイテッド93」'06 はハイジャックされ墜落するまでの間、
飛行機内で何があったかをドキュメント・タッチで再現した。
(オリヴァー・ストーン)の「ワールド・トレードセンター」'06
は救援に出かけた警察官2人が、崩壊した世界貿易センターの瓦礫の
下敷になったが、奇跡の生還を果たす映画であった。
しかし肉親を失った遺族の物語は映像化されず今まで来た。
これはまだまだタブーであったのだ、しかしこの重いテーマであるが、
2005年に発表された(ジョナサン・サフラン・ファオ)による同名の
小説「Extreamly Loud and Incredibly Close]を映画化したのだ。
事件から11年たち、時が許したのだろうか?
しかし、やはり批判が起こった。まだ尚早だ!被害や遺族の悲しみは
こんな生温いものではない! などなどである。
この事件で父親(トム・ハンクス)を失った9歳のオスカー少年は父の
遺品の中から「鍵」を見つけた。この鍵で開けたものの中に、自分に
何か残してあるはずと確信した。
鍵の入った封筒の宛名(ブラック)が唯一の手がかりである、
ニューヨーク中の全てのブラックさんを探し回るという物語であります。
オスカーを演じた(トーマス・ホーン)は美少年でデリケートである。
IQが極めて高いが、やや発達障害的で、父はそれをカバーしバランスの
取れた大人になれるよう、常に息子と遊び共に学び、旨く導いていたのだ。
それだけ密なる父と子であったが故に、父を失ったことを認められない。
「太陽が消滅しても、8分間は地球に日が射す」と同じく、父が死んでも、
自分にとって父が死ぬまでに時間がある という気持ちであった。
この映画は典型的な父子ものゆえ、母親(サンドラ・ブロック)は影の
薄さを旨く演じた。
隣に住む祖母の家に、ある老人が間借りした。声を失って筆談で話すだけ、
ドイツでの辛い戦争体験によるものらしい。祖母とどんな関係なのか?
少年は老人といると不思議だが?落ち着く、老人もブラック探しに同行した。
彼は静かに少年を見守る、少年に対する愛と、人生の悲しみが伝わってくる。
彼は「エクソシスト」'73でメリン神父を演じた名優(マックス・フォン・
シドー)である。
この映画は9.11の悲劇を直接に表現しない、少年はブラック探しをしつつ、
父との回想シーンと9.11当日のシーンを交差させて、家族を表現していく。
ある意味この手法の方が恐怖と悲しみが伝わってくる。(吉永さゆり)の
「かぁべい」がそうであった、戦争シーンなど全くなくても親しい人が一人、
そして一人と死亡電報が届く度、本当の戦争の恐さが伝わってきた映画だ。
それと同じである。
監督は出演者にアカデミー賞をもたらす名人(スティーブン・ダルトリー)
今回は(マックス・フォン・シドー)83才が助演男優賞ノミネートされたが
受賞に至らなかった。
多分9.11はまだまだ遺族の悲しみが癒えていないのに、映像化したのは尚早
であるという勢力の反対によるものと推察する。
この映画、改めて人間の最小単位は個人でなく「家族」ということを思わせて
くれました。 DVDで是非ご覧下さい。
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