映画への思い入れや含蓄が随所に見られる
私は昔から映画そのものよりも 映画のパンフレットに記載された
メイキングを読むのが好きだった、今もDVD本体より付録のメイキング
を見る時に「至福」を感じる人なのです。
ということは映画や舞台つくりを題材にした映画、劇中劇という
ジャンルが好きなのは当然、というわけで「The マジックアワー」に一言。
題名の「マジックアワー」とは映画用語で太陽が消えてから、周囲が暗く
なるまでのほんの僅かな時間で、その瞬間に時カメラを回すと、見事に
美しく現像的映像になる。映画にとって貴重な瞬間(主役の言葉)である、
つまりこの映画用語をタイトルにして「映画つくり」の世界を表現した。
三谷幸喜が脚本&監督ゆえ、彼の映画への思い入れや含蓄が随所に見られる、
劇中、場末の映画館で何度も上映される「暗黒街の用心棒」は名画中の名画
「カサブランカ」'42 のパクリ、
セット全体の雰囲気も、ヤクザの大親分を騙すのも「スティング」'73、
ヤクザ組織の会計係と警察署長のキャラクターは「アンタチャブル」'87、
親分の愛人(深津絵里)の歌シーンは「ギター弾きの恋」'99、
おまけだが(小日向文世)の「ハリマオ」はあまりにもソックリでびっくり。
親分(西田敏行)の愛人に手を出した子分(妻夫木聡)が命と引き換えに、
親分が探し求めていた「殺し屋」を連れてきた。しかしそれは全くの偽者、
正体は売れない役者(佐藤浩市)だった。役者にはヤクザ映画で殺し屋を
演じてくれと嘘を言っていた。つまり二重の騙しだったのだ。
全て映画のワンシーンと思っている殺し屋にとって、ヤクザ同士の銃撃戦
も弾の中をヒョイヒョイと飛び回る、これには爆笑。
劇中であるが、市川昆監督が自らする最期の演出シーンを作った。
結果的として先輩の大監督に対してたいへんな敬意を表したことになった。
パンフレットによると、市川監督にこの映画の出来を聞いたところ、
「なかなかよく描けてる、でも長いな」との一言、
さすが適格な評価、私も思った、面白いが 少々長いかな!
劇中劇で私が好きなのはフランソア・トリュフォー監督の「アメリカの夜」
'73とウディ・アレン監督の「ブロードウエイと銃弾」'94だった。
そして、この三谷幸喜の「The マジックアワー」も加わることになろう
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