私にとって生まれて最初に見た映画は「ゴジラ」'54。
正確には、幼少の私が見たと認識して、記憶に残った最初の映画と
いう事だ。実態は怖くて怖くて殆ど父の外套の陰に隠れていたらしい。
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生物は生まれて最初に見たものを母と認識するという、
同様に、生まれて初めて見た映画を嫌いになれないのは道理。
爾来「ゴジラのシリーズ」を見続けるととになった。
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本年、ゴジラ第一作から半世紀=50年が過ぎた。私も年を取ったが
ゴジラも50才になったのか、東宝もとうとう幕を下ろすことになった由。
題名は「ゴジラ ファイナル ウォーズ」=「ゴジラ最後の戦い」
果たして最後の戦いに相応しい映画に仕上がっているか?
期待と不安で劇場に入った。
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ふむ~、5レンジャー対ゴジラの様相、少々荒唐無稽的ではあるが、
まぁこれはこれで新しい切り口のシナリオと納得した。映像は斬新、
コマ落とし撮りを駆使して、スピード感ある映像を創りだしていた。
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しかし、やはり旧シリーズと同じ轍(てつ)を踏んでしまった。
新・旧シリーズで闘ってきた怪獣達を総出演させ、内容そっちのけ
の顔見世興行にしてしまったのだ。
最後の戦いというより「末期的な戦い」と言った方が良いと思う。
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旧シリーズ第1作「ゴジラ」'54はまぎれもない不朽の名作である、
そして「ゴジラの逆襲」'55 「キングコング対ゴジラ」'62で頂点を
極めた。しかし「対モスラ」'64あたりからパワーが落ち、
「ゴジラの息子」'67はもはやコメディーであり、それ以後は
ぬいぐるみ怪獣ショーに成り下がり、75年についに打ち切りとなった。
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9年間お休み、復活したのが1984年版「ゴジラ」なのです。
初心に戻って、また怖いゴジラ、悪役ゴジラとなって見事に復活した
のです。ゴジラファンとして嬉しかった。
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ゴジラ第1作は「世紀の名作」で別格、旧シリーズ後半、観客に
迎合するあまり、ゴジラさまに「シェー」までさせるほど落とした
キャラクターを、怖いゴジラに戻した84年版リセット「ゴジラ」は
高く評価すべき作品なのです。
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新シリーズは映像技術も進歩し何とかゴジラの威厳を守ってきた。
私は20世紀最後に見る映画として「ゴジラ2000ミレニアム」'99を
迷わず選んだ程です。
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しかしまた回を重ねるほど、ぬいぐるみ怪獣プロレスショー化して
いたのです。その極めつけが50年目の「ゴジラ ファイナル ウォー」だ。
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東宝はゴジラの魅力をまるで判っていない!
ゴジラは人間社会がどうすることも出来ない天災、つまり毎年くる
「台風の様なもの」としてあつかえば面白いシナリオが出来るはず。
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例えば(トム・クランシー)的な国際紛争ドラマに登場させるとか、
「デイ・アフター・トゥモロー」の如きパニックものに絡ませるとか、
面白いものが出来そうです。
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今回、ゴジラ縁の俳優、宝田明、佐野健二、水野久美を出演させた
のは50年記念として良かった。
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しかしX星人の首領(北村一輝)さんのくささには少々参ったし。
宇宙船の中での銃撃戦にはいささか参った、最新兵器の光線銃を
柱一本の後でかわし当たらないのは不自然だ。もう少し気を使って
ほしいものでした。ついついゴジラとなるとエキサイトしてしまう。
お許し下さいませ。
監督木村龍平氏
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