葬式が終わって程なく、生前妻が書いた絵葉書が届いた。文面には
なんと!「故郷の海を訪れ、散骨してほしい」と書いてあった。
入院してしていた時には、そんな事を一言も言わなかった、妻からの
願いの言葉に夫・倉島英二(高倉 健)は驚く。
また長年連れ添った妻・洋子(田中裕子)と心が通じていたはずなのに、
何も言わなかった事に心も傷ついていた。
彼は長年勤めていた富山の刑務官を退職をし、
妻の本心を知るために、
富山から長崎平戸の薄香の海へ1200キロの旅に出た。
小型ボンゴ車の後ろの荷台に、手作りの簡易ベッドと調理台を備つけ、
妻の遺骨の入った壷を積んで出発したのだ。
富山ー飛騨高山ー大阪ー瀬戸内ー北九州ー門司そして薄香と車は走る。
ロードムービー映画は好きなジャンルの映画だ。フロントガラスの車窓
の眺めで自分が旅をしている気分になれる、旅先で出会う人との様々な
エピソードが面白いからだ。
今回も高倉健の明治大学の後輩(ビートたけし)が友情出演している。
放浪詩人の種田山頭火の詩を口ずさみ、キャンピングカーで放浪する男、
ビートたけしゆえ只では済まぬ男と思っていたら、やはり詐欺師だった。
少々取って付けた出会いだが、全国を回りイカ飯の店頭販売をしている
男(草薙剛)の仕事を手伝う破目になる。男は酒に酔うと長々身の上話
をはじめるのだった。
もう一人同じ外商の(佐藤浩市)とも知り合うが、彼にも何か事情が
ありそうだ・・・
いままでの高倉健の映画に共通するパターンは、寡黙な健さんが
他人から悩みを打ち明けられたり、頼みごとされたりすることから
始まることが多い、やはり健さん!頼り甲斐がありそうですものネ
、
いよいよ海に到着するが、海は嵐となり、小さな食堂で宿を借りた。
そこは母(余貴美子)と娘(綾瀬はるか)が切り盛りしていたが、
その晩、漁師の夫を海でなくした身の上話を聞かされる。
「散骨」は漁師にとって忌み嫌う行為であり、誰も船を出してくれない。
外商から紹介された老漁師(大滝秀治)にも頑固に断られた。
大滝さんが出演すると、画面はリアルで深みを増す、正に「名わき役者」
この10月2日に87歳で亡くなり、この映画が遺作となった。誠に残念。
監督は高倉健と新網走番外地からコンビを組む(降旗康男)。
高倉健のロード・ムービーといえば思い出すのは昭和57(1977)年の
「幸せの黄色いハンカチ」である。この映画は北海道が舞台、網走刑務所
を出て夕張炭鉱までの車の旅であった。武田鉄也と桃井かおりが道連れと
なり、妻(賠償千恵子)に再会するまでの笑いと涙の人情話である。
「あなたに」も富山刑務所から妻の故郷の海までの人情話であり、正直
黄色いハンカチの続編の様な気持ちで見ておりました。
高倉健は御年81歳である、この年齢で堂々と主役を張れるのは日本の
高倉健と米国の(クリント・イーストウッド)(82歳)くらいであろう。
凄い人たちだ!
私も敢えて女房に問いてみた「散骨してほしいか」?と
答えて曰く 海はやめて 私は「かなずちで泳げないから」・・・・
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。