皆様、2003年 明けましておめでとうございます。
本年も「中年」の立場から独断的発言を御許し下さい。
今年の初観は大作「ギャングs・オブ・ニューヨーク」でした。
凄い映画だ、オープニングからエンディングまで2時間40分、
一時も休む暇無く、我々を圧倒し続けた。
名匠(マーティン・スコセッシ)が構想30年掛けた作品との由
だとすると、あの「タクシー・ドライバー」('76) 「レイジング・
ブル」('80)を撮りながら「Gangsを創りたい!」と思っていた
ことになる。凄い執念ですネ
米国人はネイティブ・インディアンを除いて全て移民の子孫である
現在も移民を受け入れ、正に人種の「るつぼ」国家である。
社会科で習った記憶では 1620年に清教徒が英国・国教会の
迫害を逃れメイフラワー号で新大陸に渡ったのでしたネ
その後18世紀になりスコットランド人やアイルランド人が渡って
来ました。彼らの宗教がカトリックでしたので、先住の清教徒
(プロテスタント)と対立しました。旧大陸の怨念を新大陸で果たす
この対決こそ、この映画の主題でもあります。
我々仏教徒や不信人な日本人には到底理解できない世界であるが、
宗教の差別は激しい。アイルランド人は公職に付けない時代もあった。
カソリック&アイルランド系の(ケネディー)が大統領に成ったのは
大快挙だったのです。しかし、最後には!殺されてしまいました・・。
映画を観ている内に気が付いた、スコセッシの本当の狙いは
現代米国人というものを、そのルーツと歴史から検証しようとする
大それた挑戦に思えてきたのです。
大それた検証のため、その時代の出来事を全て取り上げ、詳細忠実に
文化、風俗まで表現しようと試みた、そのためスケールは大きくなり
男女の恋や、敵討ちなどは、単なるエピソードの一つに過ぎなくなった。
映画のチラシは「すべては、この愛のために」と甘ったらしい表現。
これは「タイタニック」の2匹目の女性客を釣るための作戦にすぎない。
今回は(L・デカプリオ)様にあのラブロマンスを求めたら失望しますゾ。
映画では敵役のギャング首領ビル・ブッチャーを
(ダニエル・デイ・ルイス)が冷酷且つ複雑に演じた。凄い役者だ!
しかし歴史的には米国の初代ギャング首領はボス・トウィード
(ジム・ブロードベント)の方である。政治結社「タマニー・ホール」
の党首としての権力を利用し。暗殺、汚職、政治癒着など、その後の
米国暗黒社会の雛型を全て作った人物と言えましょう。
ボス=親分という言葉はこれ以後、頻繁に使われるようになったらしい。
米国は正に人種差別の歴史である。しかし被差別者の反発力=バネが
原動力となり成長してきた国である。純粋な競争社会であります。
映画は全編にわたり、この弱肉強食をこれでもかと見せつけられた。
「もたれ社会」の日本人には疲れる映画であろう。
現在も続く黒人への人種差別を見るに、熱狂的に「奴隷解放」を叫び
同胞60万を殺した「南北戦争」の意味はいったいなんだったのか?
たった今上陸した移民達を即入隊させ、南部の戦場に送り込むシーン
その船から荷卸される累々たる戦死者の棺おけシーンこそ、
欺瞞的「正義」によって起こされた戦争の結末を見事に見せつけて
いると思う。
ノスタルジック米国を絢爛豪華に見せた名作「風と共に去りぬ」
('39)が表の米国ならば、この「ギャングs・オブ・ニューヨーク」
は紛れも無く裏の米国でありましょう。
その意味で、この映画は名作であると思いました。
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