私が「ゾルゲ事件」を知ったのは、異母弟・尾崎秀樹(ほっき)氏
の著書「生きているユダ」や「上海1930年」を読んだからでした。
第2次大戦真盛りの時、ゾルゲや尾崎秀実(ほつみ)がスパイとして
逮捕され、絞首刑となった。戦争高揚の中、大事件であったろう。
読後、父に当時のゾルゲや尾崎秀美のことを尋ねたところ、
それこそ国家の裏切り者&売国奴!との発言だった。
これは戦時を生きた殆どの日本人の評価であろう。
「ゾルゲ事件」なにやら暗黒の日本史の臭いを感じ
私の心の片隅に残っていた。それを篠田正浩監督が自身の最後の
監督作品として製作したのだ。即劇場へ
1930年の上海をCGを駆使して見事再現した。当時上海は列強諸国に分割
され、日本陸軍に支配され、中国共産党が台頭し、混乱の国際魔都であった。
その上海の地で朝日新聞駐在員・尾崎秀実(本木雅弘)が米国人革命家
スメドレー女史と出会い、魯迅や中国思想家と親交を結ぶ内、左翼に
肩入れする様になった。
さらにゾルゲと知合うに至り、日本政府の情報を彼に提供する様になった。
この上海時代をもっと丁寧に画けば、何故、秀実が左翼に傾倒したか、
日本帰国後にまたゾルゲと共にスパイ行為?(むしろ政治行為)をしたか
が判るのにと・・少々残念に思った。
この映画は、何ゆえ226事件、日独伊3国同盟、真珠湾攻撃が起こったか?
つまり、戦争への道を出来るだけ単純化して説明を試みている。
また昭和天皇(花柳金之輔)がかなり明快にご自分の意見を主張されて
おられたことが判かった。花柳さんお役目お上手でした。
それにしても尾崎秀実は当時、日本政治の中枢にいたことに驚いた。
なにしろ近衛文麿首相(榎木孝明そっくり)のブレーンの一人
だったのだ。また日米開戦の後は 親ソ人脈として、日露・日中の
窓口の役割が期待されていたのだ。
この映画は秀実はスパイというより、ソ連親派の政治顧問、
反軍国主義者として画かれている。
さてゾルゲ(イアン・グレン)さん、主役というより、狂言回しに思えた。
篠田作品なら主役は尾崎秀実の方のはずだが、やはり日本の裏面史となって
しまう。中国支配、共産党、軍閥、特攻警察、拷問、絞首刑、家族の苦悩など
など 暗い映画になり。若者などとても客は呼べないだろう。
そこでゾルゲを主役にして、まるで(ロジャー・ムーア)の如く、
女好きのスパイを登場させ、若干のスリルとアクションを織り交ぜ
ながら、あまり暗い映画のならぬモードで、日本が何ゆえ戦争に突入したか、
当時はどんな世相であったかを、青少年に伝える映画であろう。
その意味でこの映画「瀬戸内少年野球団」'84「少年時代」'90
「瀬戸内ムーンナイト・セレナーデ」'97に続く、少年4部作完結偏なのか
と思えたほどである。監督いつでも復帰してくださいネ、待ってます!
ところでゾルゲの愛人役、あの葉@里@菜は、何しに出て来たんでしょう?
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