昔のことだが、学校の政治学の講義で「最も知能指数が高く、頭の切れる
政治家は米国のマクナマラ国防長官だ!」と聞いたことがあった。
あの時以来、マクナマラさんは気になる名前でありました。
この映画「フォッグ of ウォー」は1960年代、当時米国の権力の中枢に
いたロバート・S(ストレンジ)・マクナマラ(現在88才)本人が自ら
話し、当時の貴重なフィルムを駆使した迫力のドキュメント。'60年代
米国から見た国際政治とはいかなるものであったかを見事に公言した。
マクナマラは正に天才であった。ハーバート大学院生から即助教授
になり、'42年から航空隊大学教授として戦果の効率化を追求し、
日本国土を徹底的に爆撃し焼き尽くすことにその能力を発揮した。
B-29がリスクある低空飛行してまでも、命中率を高めさせたり、
焼夷弾で一帯を焼き払う方が効率的であると進言したのも彼らしい。
戦後は彼の統計学、効率化が評価され、フォード自動車社に入社した。
普及中型車(ファルコン)をヒットさせ、安全シートベルトを開発し、
業績を大幅アップさせた。そして青年社長に就任した。
就任早々、何と米国大統領(J・F・ケネディー)から三顧の礼で
国防長官に任命されてしまった。マクナマラ(44才)の時、正に
若きエリートの代表選手であった。
彼の真骨頂は1962年のキューバ危機の時だろう
ケネディー大統領と共に、ソ連の(フルシチョフ書記長)との
駆け引きにより見事にキユーバのミサイルを撤去させた。
彼は言う「核戦争が起こる一触即発の状態だった、
起こらなかったのは 只運が良かっただけのことだ。」
ケネディー暗殺の後、国防長官として引き続きジョンソン大統領に
仕えた。結果ベトナム戦争続行、ナパーム弾による一斉焼き払い、
枯葉剤散布などを指令、かっての日本攻撃の経験を活かした。
しかし彼は「ベトナム戦争の泥沼」に入り込んでしまった。ベトナムは
彼の論理と合理的、そして効率確率の世界ではなかったのだ。予期せぬ
ことの連続、遂に彼は判ったのだ「戦争とは五里霧中を歩くこと」と!
そして退任(事実上は解任)した。
映画をみて思った。彼は紛れもない天才である。しかし政治家ではなく
能吏である。よってその時の上司が優れていれば、彼は世のため人の
ため貢献できたはずだ。しかし愚かな上司であれば正に悪魔の手先となり
人を殺すための効率を上げることになる。結果は後者と言わざるを得ない。
この映画や「JFK」'91、「13days 」'00 を観て思った。
軍隊をもった将軍達は「戦争をしたくてたまらない!」のだ、
彼らの危機的な戦争したい圧力に対峙するには、そうとうなる勇気と
理性をもった指導者が必要なのだと。
どうも2004の米国は、そういう圧力下にある様だ。いままでも
「相手を読み違える癖のある大国」だった。今度の相手は自爆を
恐れない、合理性とはほど遠く極めて宗教的な人の様だ。
正に「五里霧中の戦争」「Fog of war」になってしまった。
マクナマラは映画の最初に言っている「人間は何度でも間違いを犯す」
蓋し!
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