今年の夏は8月15日の終戦関連映画がすばらしい
今絶賛上映中の(宮崎駿)のアニメ「風たちぬ」、米国が作った日本映画
「終戦のエンペラー」そして舞台美術家(妹尾河童・せのおかっぱ)の自叙伝
「少年 H」である。 という訳で、またまた8・15の「少年 H」に一言。
私の子供時代の戦争映画というと「二等兵物語」「兵隊やくざ」「独立愚連隊」
などの兵隊もの、「ミッドウエイ大海空戦」「太平洋の翼」などの戦記ものが
多かったが、昨今は戦時の国民生活や、空襲の被害が主流である。
鉄砲玉が飛ぶ戦場も恐いが、本土の徴兵、官憲の戦時統制、残された家族生活、
傷痍軍人、死亡通知、空襲で逃げ惑う国民の方が戦争の恐さを十分表現できる。
「キャタピラ」2010「かあべい」2007やこの「少年 H」がその代表であろう。
[少年H]が出来た前提であるが、SFX技術が発達し「ALWAYS 三丁目の夕日」
の如く昭和初期の神戸の町並みが見事に再現できたこと、そして最後はここが
空襲で焼け落ち、廃墟になるまで表現できる映画技術の賜物でありましょう。
神戸の小さな紳士服仕立屋を営む(妹尾)一家が「戦前・中・後」をどう生き
抜いたかの映画であるが、ごく普通の善良な夫婦と二人の子供の家庭である。
夫は
(水谷豊)、妻役は何と!「実の妻」である元キャンディースの蘭ちゃん
(伊藤蘭)ですもの、まったく息があっているはずだ。実生活に於ける水谷の
人格と夫婦の良識が滲み出て、昭和初期の善良な家庭を見事に表現している。
こども妹尾肇(吉岡竜輝)くんはくりくり坊主頭で、母の手編みセーターにH
のイニシャル入りゆえ、皆から<H>と呼ばれる少年、まじめで正義感が強い。
父親は彼を子供としてみていない男として頼りにしている、官憲に連行され時
空襲の時、母と妹のことを頼んでいる。そしてこの頃の世界の背景、この戦争
は勝てないこと、外人も同じ人間であると教えるが、決して表に出すなと釘を
刺した。
しかしこの考えを持ったHには種々災い(映画エピソード)となり苦労する。
Hは軍事教練を受けるが、軍国主義教官(原田泰造)からのイジメ振りや
世間の男たち(國村 準)(岸辺一徳)が戦時には「鬼畜米英」を唱えながら
戦後は「さすがアメリカ兵隊さん!」との豹変振りが旨く、当時の世相を見事
に表現している。
この家庭は比較的裕福な層で白米もあり、あまり悲惨ではなかった様だが、
経験なクリスチャンゆえ敵国宗教信者として迫害も受けた。
またくの余談であるが、「終戦のエンペラー」(岡本嗣郎著)原作本の中に
興味深い注釈がある。天皇制とキリスト教に内在する対立点であるが、戦時の
キリスト者は三つのタイプに分かれた。伝統主義型、共存型、そして対立型で
ある。この家族は共存型「地上の権威天皇と個人の魂キリスト」で生きぬいた
と思われる。
観た様々な映画は何処かでつながり、映画は本当に雑学の宝庫でありますネ
監督は我青春時代の映画「網走番外地」の、そして最近は「あなたに」の
(降旗康男)、「相棒」シリーズの松本基弘製作、吉澤良太脚本のコンビです。
お勧めの映画です。
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