これほど後味の悪い映画もなかろうと思う。
最も家族への愛が深く、最も良識があって、最も皆を助け、
最も生き残る努力した人への結末がこれではネ、
いくら原作がホラーの王(スティーヴン・キング)ものとはいえ、
いくら監督が「エルム街の悪夢の脚本家」フランク・ダラボンとはいえ、
いくら彼らの性格が屈折しているとはいえ、やはり観客の気持も考えて
作ってもらわねばネ。
ましてや米国金融危機から世界同時不況に陥り、世界中失業者だらけに
なりそうなこの時に、不安感、閉塞感だらけのこの時に、こんな映画を
見せられたら、もう生きる望みもなくなりますワ。正直!見ないことを
お薦めしますゾ。
米国のある田舎町、激しい嵐が通り過ぎた、家が壊され、電気もつかず、
携帯電話も通じない、町の人は買出しのためマーケットに集まっていた。
嵐の後、湖畔に漂っていた薄気味悪い霧(ミスト)が突然、町全体を
覆ったのだ。そこに血だらけの住民が駆け込んできて、得たいの知れない
生物に襲われたと絶叫する。住民はあわててマーケット内に避難した。
外では霧の中から巨大な触手が伸びてきて人を食い始めたのだ。
マーケットの中に避難した人達は孤立してしまった、しかし夜になると
異形な昆虫や蜘蛛が店に侵入し、店の住民を襲いはじめたのだ。
この映画は「エイリアン」の如く怪物対人間の恐怖怪獣映画である、
しかし、むしろマーケット内に缶詰状態になった人間たちの閉鎖空間
心理パニックものといえる。
次々と襲ってくる虫たちはグロテスクで恐いが、それよりもなによりも、
客の一人「おばちゃん」がもっと恐い存在であった。
キリストを妄信し、人間は贖罪を受けるべきだ、天罰を受けねばならない
と唱え続けるのだ。恐怖の中の群集心理は恐いものだ、店内の住民は
しだいに「おばちゃん」の教えに洗脳されて行った。
このおばちゃんこそ演技派女優(マーシャ・ゲイ・ハーデン)さん、
2000年に「ポロック」で見事、アカデミー助演女優賞を受賞した人。
この頃は、まだ美人女優の一人であったはずだが、イーストウッド監督の
「ミステック・リバー」'03あたりから、なんだか芸域をオバチャン路線
に転向した。そして今作で本当のおばちゃんになってしまったのだ。
綾小路きみまろではないが、オバチャンは本当に恐い。
それから、スーパーのメンテナンス係のおじさんも恐い存在だ。
よくいる典型的な衆愚タイプ、人を扇動し、無知で粗暴な男を
「ダイハード2」'90のオープニングで素っ裸の肉体トレーニングを
披露した(ウイリアム・サドラー)さんが好演した。
いずれにせよ、最も恐いのはエイリアンでも昆虫でもなく人間である、
そして、最も哀れな存在も人間であると自覚させられる映画です。
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