ダニエル・グレッグの007は本当にストイックだ、これでも007なのか?
と思うほどだ。
しかし良く考えてみると、昨(2008)年後半から勃発した世界金融危機と
世界経済破綻により世界中の人が困っている時、今までの様な荒唐無稽の
悪党を退治するべく、軟派に007が女たらし宜しく、アクションしても、
観客は馬鹿らしくて見てられなかったかもしれないと思えば、この007は
正に時流にあった007なのだと思った次第。
D・クレッグの007第1作(カジノロワイヤル)'06はジェームス・ボンド
が英国諜報部MI-6から「DoubleO」いわゆる殺しの番号を取得するため
二人の裏切り者を抹殺をすることからはじまった。(007ビギニングだ!)
前作では、最初少々野暮ったい無頼タイプの男が、しだいにタキシードの
似合う伊達男(典型的なJ・ボンド)に洗練されていく様を見せてもらった。
愛する女(エヴァ・グリーン)を失ったボンドは、死に追いやった男を捕え
常用車アストン・マーティンDBSのトランクに押し込めMI6へ移送する。
しかし組織の追手が車を襲う、前作のまったく続きからこの映画がはじまった。
凄いカーチェイスである、只々ボンドのテクニックと反射神経のみで追手を
撃退した。渋い黒塗りのアストン・マーティンには特殊な仕掛けも装備もなく
最後はボロボロになってしまう。
このオープニングの徹底したリアルさ、遊びを排除したストイックさこそ、
今作007「慰めの報酬」のコンセプトと理解した。
リアルな007にするためには、悪党をリアルにしなければならない、
もはやソビエトは敵ではないし、宇宙を支配するIT企業ではバブル過ぎて、
今の風潮に合わない、脚本家はそこを良く考え、悪党を作り出した。
世界の経済網の中に小細胞の様に散在し、目立たない、MI-6などの国家
情報機関の中枢にまで入り込んでいる。
表向きはグリーン・プラネットという慈善団体であり、しかも地球環境保護を
唱えるNPOである。
なるほどね!この手の団体は日本にも結構ありますヨ、きれいごとばかり言って
寄付を集める胡散臭い集団だ。
そして狙いは石油でも鉄鉱石でもダイヤモンドでもなく「水」、地球温暖化の
現在、人間の生命に関わる根源的な「水」こそ資源というところがリアルである。
舞台は南米ボリビア、軍事革命勢力とこの慈善団体が結託し暗躍するのだ。
そして米国のCIAが絡むが、いやはやもはやCIAは治安の番犬ではない、
米国の利権獲得のために奔走する野良犬の如しであった。
このCIAの扱い方を見ると、欧州は米国をこんな風に見ていると判り興味深い。
さて007といえばボンド・ガール無くして映画にならない、
今回はボリビア人の謎の女カミーユ(オルガ・キュリレンコ)、
名前からウクライナ人らしいが南米美人を演じていた。
しかし驚くなかれ
ボンドガールは歴代、007と必ずベッドシーンを引き受けるものだが、
ななんと!最後までな・な・無しで済ませてしまった。
ふむ~ここまでストイックとは!
そうか、まだ007にとって前作で恋人を失って2週間目にしか過ぎない
ストーリー、あのボンドも喪に服しているのだろう
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