「ラスト・サムライ」を謹んで観賞致しました。
米国人が作った時代劇、その表現と映像に驚くほど違和感が無かった。
米国人の目から見た侍=日本人象、これほど敬意を表し、好意を持って、
表現した映画を知らない。
明治新政府の軍事顧問として訪日した米国の元騎兵隊将校オールグレン
(トム・クルーズ)は政府に反旗を翻す侍軍団の捕虜となってしまった。
彼は、その侍軍団の集落で一冬過ごし、侍の生活を垣間見る。
質素・清潔・全てに自制的な生活、あらゆる武芸に励み、
精進する姿、仏教典を読み、瞑想し、精神の修行に励む姿、
武道、農耕の傍ら、書道・活花・茶道を嗜む優雅な姿であった。
それらは米国人には到底信じられぬストイックな世界であったのだ。
その最も純粋な形=侍の原型は氏尾(真田広之)だ。いやぁ~渋い!
甘さを廃し、無駄を排し、質実剛健そのもの、剣さばきは見事。
実際彼は子役の時代、アクション第一人者時代を通して徹底的に
剣さばきを仕込まれている。本当に凄い役者になったものだ。
頭領の勝元(渡辺 謙)、この人は武士の強さに、更に知性が加わる。
毎朝、仏典を読み、教を唱え、なんと英語もしゃべるのだ。凄い!
元々、明治天皇に文武を教える立場であった人、そのまま元老院に
いれば首相になったであろうに、義をつらぬき政府に反旗を翻した。
正に「武士道とは死ぬことと見付けたり」そのものであります。
勝元の妹たか(小雪)、夫をオールグレンに殺されたにも拘わらず、
勝元に命ぜられ、オールグレンの治療と世話を命ぜられる。
憎みながらも、次第に彼に惹かれて行く、彼を見守る姿には、
秘めた妖艶さを醸し出していた。
死を覚悟の出陣の時、彼の身支度をする女の手と目。ぞっとする
エロティックなシーン、米国なら、ここで一挙に思いを遂げる
のだろうが、ここは我満をし、「武士道とは忍ぶ恋と見付けたり」
ストイックに日本映画に徹した。
カメラワークがとても美しい、日本の村落、サムライの武芸と
質素な生活はまるで黒沢映画の趣がある。多分優秀なるカメラマン
なのだろう。
トム・クルーズは紛れもない大スターであるのに、この映画では
日本の侍の生活を体験しながら武士道を紹介する「狂言回しの」
様な役に徹した。
しかし、サムライを尊敬し、生き方に共感し、次第に剣術の腕前も
上達し、立派なサムライとなる。近年にない好演だと思いますヨ。
この映画は戦場シーン(特に落馬)が優れています。
アカデミー委員会さん!ここは今回、何としても!
トム・クルーズさんに主演男優賞をさし上げて下さいませ。
コメント
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