今年2012年5月21日、日本各地で「金環日食」太陽の金の輪が
観測された。私の年齢だと金環食と聞くと思い出す映画がある。
「まわりは栄光の金色に輝いて見えるが 中の方は真っ黒に腐って
いる。」という台詞で始まる「金環蝕」1975(昭和50) に一言。
社会派作家と呼ばれ芥川賞作家である(石川達三)の同名の
小説を同じ社会派の巨匠(山本薩夫)監督が映画化したものだ。
まさに高度成長真っ盛りの日本、自民党全盛、政治家も行政組織も
強い権力を持っていた時代に、あの政治家だと一目で判る役者を配し、
その政治家の実名をもじった名前を付けて、政治腐敗を糾弾する映画
を作ったとは、この時代の映画作りには根性と筋金が入っていたこと
を証明している。
いやはや、基本的には今も同じ体質なのだろうが、今より露骨で
大規模、「金権政治」の時代である。行政、立法、司法そして
マスコミまでどっぷり金権・利権に浸かっていたことが判る。
昭和39(1964)年、時の首相、寺田正臣=池田勇@(久米明)と
酒井和明=佐藤栄@(神田隆)の自民党総裁選で、票集めのため
10億円の札束がばら撒かれたが、寺田は僅差で再選された。
池田首相は「貧乏人は麦を食え」との迷台詞で有名だが、久米の
池田は本当にそっくり!
しかし早々に資金回収をせねばならなかった。方策として大型ダム
建設を談合により落札させ、見返りに大ゼネコンから献金させたの
である、正に贈収賄である。
これを指図したのは首相懐刀,星野官房長官=黒金泰@(仲代達矢)。
東大出、高級官僚出の鼻持ち成らぬエリート政治家を見事に演じた。
寺田首相夫人(京マチ子)も夫の権力を傘に役人を走らせた。
いわゆる忖度(そんたく)を期待してのことだ。
ダム発注元である電力開発総裁(内藤武敏)が旨い、官僚から天下り、
権力主流派の旨味を知り尽くしている男、何食わぬ顔で談合を進めた。
この人は善人も悪人もやれる役者で私はファンであります。
そしてこの贈収賄を予算委員会で糾弾する爆弾代議士=田中彰@
(三国連太郎)。悪を正す正義の味方と言いながら、両陣営から
金を貰い、脅して金を出させるマッチ・ポンプ政治家である。
三国の面目躍如、政治家の低俗で品性の悪さを見事に表現した。
金権といえば幹事長の斉藤荘造=田中@栄(中谷一郎)扇子パタパタ、
汗ふきふきで「君!党のためにこれで納めろ」と札束をポンと三国に
投げ出す。この映画の翌年(昭和51)年にロッキード事件が発覚
したが、正にこのシーンが全てを物語っていると改めて認識した。
最後の極めつけは贈賄ゼネコンの専務(西村晃)、口八丁手八丁、
料亭で助六を踊り、芸者、ホステスを充てがい、政治家を懐柔する。
公共事業獲得のためには手段を選ばない男。いやぁ~旨いですワ
山本薩夫監督は俳優座、民芸、文学座から癖のある芸達者を集め、
誠に面白い、権力闘争の人間ドキュメントを作り上げたのです。
この映画を見て思った、この電力開発株式会社と政治の癒着体質は
そのまま、原発推進の原子力村に受け継がれ、結果として3.11
原発事故の「人災」につながったのだろうと・・・・
コメント
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