2008年観た新作ばかりでは、早々ネタ切れになりますので、2007年観た
映画の紹介もさせてくださいませ。
新は新 旧は旧かな!
私にとって、生まれてから「初めて観た映画」と認識できたのは「ゴジラ」1954
そして生まれてから最初に「面白い!と思った映画」が「用心棒」1961、
その面白かった「用心棒ヨ!もう一度」と期待し、見事に満足させられた映画が
「椿三十郎」1962だった。
特に椿三十郎(三船敏郎)と室戸半兵衛(仲代達矢)の最後の決闘シーンは
超衝撃であった。少年の私に、人を斬るとあんなに血飛沫が上がるものなのか!
と人体の不思議発見を知ることになった。
爾来、黒澤明監督に あんな面白い時代劇をまた創って!と、期待し続けたが、
遂に叶わなかった。後々の黒澤時代劇「影武者」'80も「乱」'85も私が期待する
エンターティンメント時代劇ではなかったのデス。こんな同じ思いを持っていた
同年輩の人って意外に多いのではないかと思います。
一方、ビジネスライクのハリウッドやイタリアは黒澤明作品を真似て作った
西部劇「荒野の七人」'60や「荒野の用心棒」'64「ラストマン・スタンディング」
'96をリメイクし、大ヒットさせ大儲けしました。でも所詮は「の・様なもの」だ。
さていよいよ日本でも、この黒澤「椿三十郎」を大胆にも完全リメイクしようと
いう人が現れた。あの角川春樹が製作、森田芳光が監督、椿三十朗は織田裕二だ。
ふむ~、勇気ある人達だ、しかし無謀とも言える!あの時代(1954~1965)の黒澤
監督は黒澤全盛期であり、その作品は正に究極の出来栄えであったからです。
映画はシナリオ=脚本で決まるといいますが、
今作は何と!当時の黒澤明、菊島隆三、小国英雄の共同脚本をそのままを使用した。
森田監督は究極の脚本と考えたからに他なりません。これは正解であると思います。
結果、映画は誠に面白く、合格点 皆さんも是非ご覧になることをお薦めします。
・・・・と誉めた上で 以下はネタバレですので、観る方はご注意を
新旧「椿三十郎」と比べると、脚本 台詞 そして音楽は同じです。
しかし風味は大きく異なりますネ。黒澤の椿三十郎は 直火焼き苦味コーヒー、
森田の三十郎はアメリカンコーヒーに砂糖入といったところでしょう。
椿三十郎の面白さは「野犬的・素浪人と城に仕える御用人」の対比である。
城代家老の奥様(中村玉緒)の台詞にも、「あなたは抜き身みたいな人、でも、
本当に良い刀は鞘に入っているものなのですヨ~」とスバリ本質を付いている。
この「抜き身刀」の象徴シーンこそ、あの有名な30人斬りである、新作では
織田三十郎に出来るだけズームインして、斬られる側を鮮明に映していません。
一方旧作の三船敏郎三十郎は広角レンズで、敵方侍をバサバサと斬り殺して行く、
最後は逃げ惑う奴(やっこ)まで後ろからメッタ斬る、残酷の極みでもあった。
これは剣さばき(チャンバラ)の技術の差と、それよりも昔と今の社会的寛容さ
の違いによるものと思われます。
さらに、主役の織田裕二も所詮やさしいお兄さんの域である。
その意味で 織田三十郎さんは「鞘に納まる刀」の一人であり、本当の意味で
「椿三十郎」になれなかった。これでは元祖に敵わないと思いましたヨ。
しかし上の批評は私の様な頑(かたくな)な黒沢ファンからのもの、
今現在作った新作としては誠に面白く、良く出来ていると思います。
若い人に是非見てほしい映画でございます。
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