この映画「のぼうの城」はある意味、リーダーシップ論である。
戦国武将のリーダーシップ手法を表現するに「ホトトギス」比較がある。
「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス」と言った徳川家康。
「鳴かぬなら、鳴かせて見せよう、ホトトギス」と言ったのは豊臣秀吉。
「鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス」は織田信長の真骨頂である。
この映画「のぼうの城」を見て思った。城の主、成田長親(ながちか)
なら「鳴かぬなら、鳴かなくてもいいよ、ホトトギスちゃん」だろう。
多分こう言われたホトトギスちゃんは、自主的に鳴くのでしょうネ。
2012水泳5輪で「北島康介さんを手ぶらで帰らせるわけに行かないぞ」
と後輩達が協力してメドレーで、見事銀メダルを獲得したことや、
なでしこジャパンの佐々木監督や、日本ハムの栗山監督などの如く、
選手達が「監督を男にするゾ」という自主性を引き出すのが、今の
リーダーなのかもしれない。
時は1590年、豊臣秀吉は天下統一への最後の敵として北条氏征伐を進めた。
北条小田原城の前に、成田家の「忍城」(おしじょう)があった。先ずここ
を落とすべく、石田三成を総大将にして20,000の大軍を送り込んだのである。
迎え撃つ忍城の兵力は、な・な・なんと、たった500駒のみであった。
城代・成田長親(野村萬斎)は降伏を心に決めていたが、豊臣軍使の傲慢
で無礼千万な「弱いものいじめ」態度が許せず、ついつい「戦いまする」
と言ってしまった。結果戦いの火ぶた切ってが落とされた。
何しろ頼りにならない「でくのぼう城代」長親である、武将たちは途方に
暮れつつも、殿が言ってしまったことゆえ「戦うしかない」と決心する。
さらに、驚くことに百姓・領民・そして女子どもまでが「のぼう様のため
なら、おれ達も共に戦うべ 」と立ち上がったのだ。
なにゆえ百姓たちが立ち上がるのか?
これは日ごろから長親は、城の仕事そっちのけで百姓たちの野良仕事を
手伝ったり、分け隔てなく、むしろバカにされつつも親しく接していた
からだ。長親は領民の人気ものであったのだ。
この城は意外にも堅固な城郭であり、また武将も百姓も極めて士気が高く、
三成の大軍と五分の戦いを繰り広げた。これは驚くなかれ正に史実である。
さてセリフは「現代風時代劇」であったが、私には黒澤時代劇の風味を感じた。
百姓たちの田植え踊りのシーンや、「ぐっさん」こと(山口智充)が演じた武将
は黒澤映画の常連(藤田進)の再来かと思った程、無骨で鎧が似合っていた。
黒澤映画では定番である「能」のシーンも、日本の能と狂言の第一人者
(野村萬斎)が小舟上の「狂言」で見事演じてくれた、これは見物ですゾ。
原作と脚本は旬の(和田竜)、二人監督(犬童一心)と(樋口真嗣)により
本当に面白いエンターテインメント時代劇を作り上げたのです。お勧め映画。
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