原作は(宮部みゆき)が1996年から1年間、朝日新聞に連載
した長編推理小説だが、1998年に見事、直木賞を受賞した。
これを名監督(大林宣彦)が2004年映画化したものです。
舞台は平成8(1996)年の東京荒川区北千住、正に下町だが、
そこに聳える25階建ての高層マンション(今なら高層といえな
いですナ)で殺人事件が発生した。一人は25階から転落し、
3人は部屋の中で無残に撲殺されていた。
一家皆殺しの事件であるが、何と!その部屋住んでいるはずの
住人では無く、それぞれ皆他人同士であった。これが謎が謎を
呼び、当時、マスコミが話題騒然となった。しかしこれに気付か
ないとは、マンションというものは誠に希薄な人間関係である。
小説もそうだが、この映画の犯人探しは、事件マンション住人から
被害者の関係者まで、全ての証言を聞いて歩き、事件の核心に
迫っていく手法である。
丁度刑事が関係者や容疑者から事情聴取するのを付いて歩き、
レポーターが順次報道するようなものである。よって生々しく、
まるでドキュメント映画を見ている様で、正に大林監督の映画
の成せる業である。
また只の証言だけでなく、その人一人一人の素性をドラマにして
いるのが誠に面白い、そうだろう人間は自分が主役の一人称の
世界に思えるが、人間それぞれ生きているのだから当然ですネ、
この映画の主題は犯人を追い詰める推理ドラマではない、犯人と
被害者に一寸でもまつわる人の人間群像ドラマである。しかしまぁ、
誰一人順風満帆でなく何かしら恨み辛み嫉みを持っているものだ。
正直、殺人動機も納得するものでば無いし、こんな計画が旨く
行く訳が無い。松本清張的な巨悪でもなく、社会の歪でもなく
バブル景気後に起こった庶民の僅かな欲によるものであった。
警官に住人を紹介するマンションの管理人(岸部一徳)の
飄々振りが上手い、それと事件の起こった部屋の名義人の姉
(赤座美代子)の少々くたびれた熟年女性の姿(この当時
まだ60才)が良かった。
さすがだ!昔、私はこの女優さんのフアンだったのですヨ。
役者ばかりではない当然我々も歳をとり、くたびれるはずである。
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