7月4日米国コロラド州でこの映画の上映時に無差別乱射事件が
勃発した。ある意味、社会的に影響力が強い映画の証拠である。
という訳でバットマン「ダークナイト・ライジング 2012」に一言
「WOOO!」とか「Bomm!」擬音の軽薄な米国コミックが、
かくも社会性をもった哲学的な映画に生まれ変わるとは!映画の
出来は監督と製作者の技量により決することを証明した作品。
①私もアダム・ウエストのTVシリーズ(1966~68)を見ていた口。
ヒーローのバットマンより個性的な悪党達が好きで見ていたと記憶。
ジョーカー、ペンギン、ナゾラ~(リドラ~)、キャットウーマン、
トゥーフェイス、スケアクローが登場、子供向けのTV番組故か、
古き良き時代ゆえか?邪悪な奴らであるが、どこか抜けていて
憎めない悪党達、私はそのところが好きで見ていたといえます。
②ある意味、悪党は例外なく異型であり、出自は悲惨である。
この異型さと社会への鬱積をテーマにして映画で見事にカムバック
させたのが(ティム・バートン)監督の2作「バットマン」'89、
「バットマン・リターンズ」'92であった。
(ジャック・ニコルソン)ジョーカーの存在感に圧倒され、又
(ダニー・デヴィート)ペンギンの異形さ強烈で哀れを誘った。
ティム・バートンの異型世界感を表現し、私も引き込まれたが、
コミックとTVから離れ過ぎダーク過ぎるとの批判されたと記憶。
③その後はコミック路線に戻って(ジョエル・シューマッカー)監督の
2部作「バットマン・フォーエヴァー」'95,「バットマン&ロビン、
Mrフリーズの逆襲」'97 が製作された。
(トミーリー・ジョーンズ)のツゥー・フェイス、(ジム・キャリー)
のリドラー、(アーノルド・シュワルツェネッガー)のMr.フリーズと
大物勢ぞろい。こうなると濃くて・うるさくて、正直モルツ氏と同じ、
このシリーズ私も引いてしまった次第。
④そしていよいよ2005年から(クリストファー・ノーラン)監督の3部作が
始まった。「バットマン・ビギンズ '05」,「ダークナイト'08,」
そして今作の「ダークナイト・ライジング '2012」に至る。
バットマンには性格役者(クリスチャン・ベール)を登用し、
バットマンの内面と苦悩に焦点を当てたのが成功した。
またバットマンの脇を渋い役者で固めた。ゴードン警部に悪党役者
(ゲイリー・オールドマン)執事アルフレッドに(マイケル・ケイン)、
技術顧問ルーシャスに(モーガン・フリーマン)を配し、各人とも
孤独なバットマンを支え敬愛振りを旨く表現している。
前作の悪党ジョーカーも大物ではなく、性格役者の(ヒース・レジャー)が
圧巻、彼の命を削った演技(終了後に死亡)に、私を含め全ての観客は
本当の恐怖感を味わったはずだ。
そして今作の悪党ベイン(トム・ハーディ)は私の知らない役者、
この巨漢のテロリストまるで13金シリーズのジェイソンかマッド
マックス2'81のヒューマンガスの形相である。
原爆を炉心溶融させゴッサムシティーの全滅を図る、市民は恐怖
のどん底、既に炉心溶融を起こした日本人には心が痛む設定である。
犯罪の主旨は米国の富裕な支配層を消滅・破壊することらしい、
まるで中国の文化大革命の様相、これはある意味格差社会米国の
「ワーキング・ブアーによる革命」を意味していると推察した。
市民全滅のテロであるが、ダークナイトのジョーカーほどの恐怖を
感じなかった。それば前作のジャーカーの台詞「どんな恐ろしい
計画も予測されればパニックにならぬ、予測できない混沌こそ恐怖
の本質なのだ」。
正に「混沌の恐怖」銃乱射事件の犠牲者に深くお悔やみ申し上げます。
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