2017年5月公開の「メッセージ」を観て、つくづく思った。
映画は「雑学の宝庫」である。今回の映画感想は難解ですゾ
この米国での映画原題は「ARRIVAL」である。また小説
原作は中国系アメリカ人SF作家(デッド・チャン)氏の
「あなたの人生の物語」であり邦題と全く異なる。
世界各地に謎の宇宙船が出現した。12個の宇宙船がアメリカ、
中国、ロシア、日本、オーストラリアなど12カ国に1船づつ
到着した。奇妙な卵の様な宇宙船は、地面から8.5m上空で縦に
浮かんだままなのだ。
宇宙人の目的は戦争か平和か?世界でロシア、中国と覇権を争っ
ている米国は主導権を握るために先に目的を知る必要があった。
宇宙人の目的を探らせようと、米国国防省(フォレスト・ティカー)
は言語学者ルイーズ・バンクス博士(エイミー・アダムス)を招聘
しエイリアンと交信させ、解読を図った。言語学も面白いものだ。
全く知らない言葉とのコミュニケーションは如何に難しいかの例
として、1770年にオーストラリア大陸に上陸したクック船長が
奇妙な動物を見て、現地アボリジニにあの動物は何か?と聞いた時
「カンガルー」と答え、動物はカンガルーになったが、カンガルー
とは「あなたは何を言っているのか?」と聞いただけの事だった。
宇宙船の中で出会ったエイリアンはどういう訳か?タコ風である。
「ヘプタポッド」(七本脚)である。「アボットとコステロ」と
往年のコメディアンの名を付けたが、しゃれたユーモアである。
言語学に「サピア=ウォーフの仮説」がある。これは使用言語が
その世界観をかたちづくるといものだ。つまり英語圏、中国語圏、
日本語圏など言葉が異なれば見えている世界も違ってくるのだ。
ルーズは根気よくペフタポッドと交信する内、自分の娘の誕生から
死までを知った。娘の名はHANNAH、前から読んでも後から読んでも
同じ「回文」である。体験なのか予知なのか?未来が見えたのだ。
ルーズは宇宙人の世界観を感じ取った、彼らは過去、未来、現在に
順番は無く円循環であり、彼らは地球の危機を知らせにきたのだ。
中国も解明を急いでいた、交信に麻雀パイの記号を利用していた。
マージャンは勝、負けの世界、この言語のやりとりで「道具」を
「武器」と訳した中国はエイリアンに宣戦布告した。さすが米国
映画、中国の世界観は好戦的と断言しているのだ。
ロシアも他国も宣戦に追随、遂に宇宙戦争に突入したその間際、
ルイーズは中国の最高権力者シャン上将の個人の携帯に交信して、
ある言葉を伝え、奇跡的に彼の心を替えさせ戦争を思い留まら
せた。宇宙船は次々と去って行く。地球は救われ人類は救われた。
このどんでん返しこそ、上の様々な理論の帰結である、面白い!
この理論を皆さんに伝えることは難しい、知的好奇心の旺盛な
皆さんにお勧めします。DVDでじっくり確認してください。
監督はブレードランナーなど今最も旬な(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
共演は数学者ジェレミー・レナー、大佐(フォレスト・ウィテカー)
シャン上将(ツイ・マー)
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