どういう訳か 妻夫木 聡(つまぶき さとし)は家族をテーマに
した映画に引っ張りだこである。
まじめで、ハンサムで気立てが良いが、少々気が弱い、こんな人
一人くらい家族にいそうだし、又 こんな人家族にいたら良いな!
という希望から、家族映画に頻繁に登用されると推察する。
(山田洋次)監督の 「東京家族」2013では、何につけても兄、
姉より落とる末っ子だが、一人になった父親を一番心配するキャラ。
同じく(山田洋次)監督の「小さいおうち」2014 でも一人暮らしの
年老いた大叔母を何かと心配する役。
そして今回、(石井裕也)監督の「ぼくたちの家族」2014 では
母の発病とその治療費の工面、父の会社が倒産状態、そして
自分の妻が出産まぢかと 全て自分の肩に乗しかかる役である。
東京近郊の新興住宅地に一軒家を持ち、父は小さい会社の
経営者、母は専業主婦、長男は大手会社に勤めて妻と暮らす、
次男は一人暮らしの大学生。
プアな家庭ではない、比較的恵まれた、いわゆる中流だろう。
しかし母(原田美恵子)が「脳腫瘍」と発覚。
しかも余命が1週間と宣告された。まだら記憶になった母、
無辜になった母の口から次々と本音や不満が出てくる。
夫(長塚京三)への不満、長男(妻夫木聡)が子供の時
引き籠りで苦労したこと、次男(池松壮亮)にお小遣いを
渡していることなどを言われ、男たちはタジタジである。
そして、何よりも家庭の財政は破綻状態であったのだ。
母は生活維持のためにサラ金から借りまくり、父の会社は倒産
状態、しかも長男は父の会社の借金保証人になっていたのだ。
結果、母の入院費に事欠く有り様だったのです。
今や日本に生活保護を受けている人は160万世帯、
自立貧困層は705万世帯と言われておりますが、
この家庭の様な一見「普通の家族」の生活破たん予備群と
なると、天文学的数字になりそうである。
これが今の日本人の本当のサイフの中身といえましょう。
さて多くの病院を探し、母の治療に望みが出てきた、たぶん
多額の医療費もかかろう、長男は悩んだ末、「オレ!悪あがき
してみる」と開き直った、母の治療を優先する覚悟をしたのだ。
この映画、本当の意味の解決策は明確ではない、
「とにかく皆でがんばろう!」という日本人精神論で結んだ。
私の若い時、高度成長期、日本人は皆自分は中流と思い、
将来中流以上になれると思っていた。どこかで道を間違えて、
国民はどんどんプアーになっていると思う。
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