みなさん明けましておめでとうございます。
また熟年の勝手な映画論評にお付き合い下さいませ。
今年最初に観たDVD「リンカーン」に一言
一昔前 私たちが子供のころ 「尊敬する人物は誰?」と聞かれると
「リンカーン」が圧倒的に多かったと記憶する。
昔は絵本で「世界の偉人ものがたり」なるものを良く 読まされた
結果でしょう。今の子供にとって尊敬する人は「父か母」と身近だ。
さてリンカーンといえば1861年就任の16代米国大統領である
「人民の人民による人民のための政治」という言葉が有名だ。
南北戦争の末、奴隷解放を成し遂げた偉人中の偉人である。
スティーブン・スピルバーグが監督しダニエル・デイ・ルイスの主演で
映画「リンカーン」が創られた。Dルイスは1年間前からリンカーンを
徹底的に調べ上げ、外見もリンカーンそのものになり切った。
いやはや面白い、よくある少年時代から苦労して貢成し遂げるまで
の「立志伝」「偉人伝」と思いきや全く異なっていた。
一言でいえば「政治ドキュメントドラマ」=「権力闘争ドラマ」であった。
1861年勃発の南北戦争は62万人という戦死者を出す
泥沼戦争になったが、4年の歳月を経て、いよいよ南の敗北が
見えてきた。
リンカーンは常々国民と議会に訴えてきた「奴隷解放のための
合衆国憲法(修正第13条)」を可決すれば南軍は大義を
失い戦争は終結すると・・・
リンカーンは恐れた。戦争が先に終結してしまえば、議会で2/3の
賛成が必要な憲法改正の可決など吹っ飛んでしまう。
与党共和党も一枚岩ではない、民主党員は殆ど解放反対だ、
白人の黒人に対する差別は半端なものではなかったのである。
また300万人におよぶ奴隷の解放の結果を恐れていた。
南部連邦から平和使節団がワシントンに送られてきた。
リンカーンは敢えて使節団を待機させ、和平交渉を遅らせたのだ。
リンカーンの議会工作が始まった。ロビイストを使い重要ポストと金を
餌に民主党員を寝返させ票を確保していく。
一方自分の共和党内も説得が大変であった。保守派重鎮と
奴隷解放急進派の2大勢力の妥協を説得していく。
万人平等と黒人参政権を訴える急進派の親分スティーブンス議員
(トミー・リー・ジョーンズ)の持論と彼への説得は面白い。
リンカーンは「例え話」を混じえて判り易く、話は本当に旨い。
一人一人への説得にはリンカーンの思想と哲学が込められており、
素晴らしい偉人であったと、改めて尊敬した。
リンカーンの説得話と議会内での各議員の演説こそ、この映画の
見どころである。
スピルバーグ作品の「アミスタッド」1997とダニエル・デイ・ルイス主演
の「ギャング・オブ・ニューヨーク」2001を関連作品としてお勧めします。
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