1941年12月8日から70周年ということで作られた映画、
昭和16(1941)年12月8日とは 真珠湾攻撃、すなわち太平洋戦争
開戦の日、という訳で聨合艦隊司令長官「山本五十六」に一言
1940年、日独伊三国同盟が締結され、日本はどんどん日米戦争の道を
走っていた。当時、国民もマスコミも、政治家も軍人も戦争をしたくて
たまらなかった様だ。
この映画を見る限り、戦争反対を唱えるのは山本五十六(役所広司)と、
一杯飲み屋の女将(瀬戸朝香)しかいなのでは?と思えるほどである。
山本五十六が日米戦争を避けようとするのは、彼は海軍として米国の
ハーバード大学に留学した経験があり、アメリカの実力を知っており、
軍事力は日本の100倍と知っていたからだ。
海軍良識派、米内海軍大臣(柄本明)が退任し、山本も海軍次官を
退任すると、海軍の政治パワーは及川海軍大臣 永野軍令部総長
(伊武雅刀)ら戦争推進派の主導となり一挙に戦争へ進んだ。
最後まで戦争反対と唱えた山本であったが、戦争の総帥・連合艦隊
司令長官に就任し、日米もし戦うならば米海空軍の最前線基地を一挙に
潰し早期講和に持ち込むしかないと確信し「ハワイ真珠湾奇襲攻撃」を
敢行した。果たして見事に大成功・大戦果を納めた。
しかしその後ミッドウェイ海戦で惨敗したあとは日本軍は敗退の一途を
たどる。もちろん日米軍備の差もあろうが、レーダー精度と通信精度の
差があり過ぎた。電波はことごとく傍受され、艦隊は察知されていた。
果たして戦艦大和の轟沈をもって帝国海軍・聨合艦隊は全滅した。
最後まで戦争反対を唱え、戦争が始まってからも軍令部の作戦と対峙せ
ざるを得なかった悩める総帥山本五十六を役所広司は見事に演じた。
監督は今最も油の乗っている(成島出)さん。
2012年度日本アカデミー賞で「八日目の蝉」は作品賞と監督賞を見事受賞した。
同作品で主演女優賞、助演女優賞、脚本賞など10部門独占受賞している。
私がこの手の映画が好きなのは、子供の時から観続けていた東宝の8.15
シリーズのせいである。円谷英二の特撮戦闘シーンは圧巻であったし、
特に戦争の是非をめぐる軍内部の権力闘争や、艦長と参謀達の軍儀や
軍略の対立が面白すぎるのだ。
1968年の「連合司令長官 山本五十六」(三船敏郎)は秀作であった。
役所広司の五十六も悪くないが優しすぎる 三船・五十六の方がエッジが
効いて軍人そのものだ。
昨今の戦争映画、本作「山本五十六」や「男たちの大和/YAMATO]2005など、
コンピューターによるCG・SFX技術により戦争シーンは進化している、
しかし、やや45年前の東宝8・15戦争シリーズの圧倒的な迫力とリアル
には勝てないと思う。この徹底的な差は何か?それは脇役の層の厚さである。
昔の戦争ものに出てくる軍人は皆、存在感があるのだ。戦争経験者も大勢
いようが、それよりも東宝も東映も日活も日本映画黄金時代が終わりつつ
あり、往年の名優や大部屋役者が山ほどいた時代なのだ。
往年の主役級が首相や大臣や将軍を演じ、人気役者が青年将校を演じ、
悪役たちが艦長や参謀を演じ、大部屋役者が兵隊を演じた。以下比較しよう
1968年の山本五十六 1981年の連合艦隊 2011年の山本五十六
山本五十六 三船敏郎 小林圭樹 役所広司
米内海軍大臣 松本幸四郎 柄本明
及川海軍大臣 北隆二 藤田進
永野軍司令部総長 柳英二郎 小沢栄太郎 伊武雅刀
南雲司令長官 藤田進 金子信男 中原丈雄
宇垣参謀長 稲葉義男 高橋幸治 中村育二
参謀 土屋嘉男 三橋達也 椎名橘平
航空隊長 加山雄三 永島敏行 五十嵐隼士
陸軍参謀 中谷一郎 小沢長官 丹波哲郎 山口艦長 阿部寛
近衛総理大臣 森雅之 豊田大将 田崎潤
伊藤長官 鶴田浩二
ヒロイン 酒井和歌子 小手川佑子
いやはや藤田進や田崎潤などは役者というより軍人そのものですワ
何でも昔と比較して、昔の方が良かったというのは歳をとったせいで
しょう。お許しを・・・
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