皆様明けましておめでとうございます。今年も熟年の立場から
気ままな映画の感想を述べさせてくださいませ。
さて本年初見は日本推理小説の最高峰 故(松本清張)生誕100年
を記念して製作された清張不朽の名作「ゼロの焦点」でした。
小説は昭和33年(1958)から2年間雑誌で連載され、
当時大きな反響を呼び、超ベストセラーとなったのです。
今作は1961年の作品に続き2度目の映画化の由。
この映画の見所は、日本の戦後昭和21年から昭和35年の
時代を見事に再現したことと、今最も油が乗っている3女優の演技
比べというところでしょうか。
第一作1961年は正にライブでありロケもそのまま使えたで
しょうに、今作2009年は50年経ってしまい、全てSFXや
CGによって当時を復元せねばならなかった。
私にとってまるで「ALWAYS三丁目の夕日」’06を見た時と
同じ感動を覚えました。
失踪した夫を探すべく冬の北陸に向かう、けな気な新妻役に
(末広涼子)。アイドル時代の作品「WASABI」‘02で、
この子どうなるのかと心配だったが、実生活でも離婚や人生経験
を積み、「おくりびと」’08や今作で連続好演し、今や女優の筆頭格
になったと思う。
この映画の核となる、北陸の名士夫人役に(中谷美紀)、
彼女はたぶん30代の女優の中で一番の演技派であると思う、
彼女の場合どの作品も光っているが、私は「ホテル ビーナス」’04 の
朝鮮人妻役の旨さに度肝を抜かれました。
そして素朴な漁師の女に(木村多恵)、TVの救命病棟24時で
看護士を演じている。この映画では田舎くさい女だが、3女優の中で
一番の美人と思います。なにしろ私の場合、日本顔(いわゆる醤油顔)
が好きなものでスミマセン。
さて映画は昭和30年代を再現し、荒涼たる北陸日本海を見事に
表現した。しかし、いかに優れた原作も時が経つと、その主題が
風化することを感じた。つまり、戦後、米国進駐軍相手の娼婦
(いわゆるパンパン)が多数いました、女が生きていくために止む得
なく選んだ道とはいえ、世間は許せざる行為と思っていた。
貞操を売ることは日本女性の恥、
しかも米兵は戦争犠牲者にとって憎い敵であったのだ。
戦後の混乱が終わり、娼婦たちも塵散りになったが、絶対に知られ
たくない過去であり、過去を隠し生活していた女性が多々いたはずで
ある。
今の若い人たちにとって、また年配者も時が経った今では、
この犯罪の動機に説得力が無いと思われる。世間は決して許さないと
いう背景が理解できぬし、また現在は風俗商売に対しても、性に
対しても比較的寛容でもある。
さらに結婚相手の過去や正体を全く知らずに結婚することなど、
今では考えられぬことであり、しだいに解明される夫のミステリー
などは、今の若者にとってはトンチンカンな話となっている。
松本清張生誕100年記念作品ゆえ、原作を大きく変えることが
出来ない脚本であった事は理解しましょう。
「昭和は遠くなりにけりですナ」
コメント
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