この映画はあながち日本と無縁ではないのです。
パレスチナ自治政府は、昨年11月カリスマ的指導者(アラファト議長)が
亡くなった。その後つい最近であるが、パレスチナ議会選挙で、
何と!あの過激派「ハマス」が勝利した。
一方イスラエル政府は強硬派であった(シャロン首相)が今年1月、
脳梗塞で危篤に陥いり事実上政治の世界から去った。
映画のはじめに、イスラエル首脳が、主役アヴナー(エリック・バナ) に
暗殺の命令を出すが、イスラエル首相(ゴルダ・メイア)女史と ともに
同席していた陸軍少将が(シャロン)である。
中東戦争を指揮してきた両指導者が舞台から去り、混迷を深める この時に、
パレスチナとイスラエルのテロと暗殺の応酬を題材にして、 あらためて
両民族の歴史的紛争と根深い怨念を世に明示した。
スピルバーグ監督の「ミュンフェン」はなかなか意義ある作品と思う。
1972年9月ドイツのミュンフェンオリンピック選手村でイスラエルの 選手
11名がパレスチナゲリラ「黒い9月」によって殺害された。
34年前、世界的な衝撃であったはずだが、その事件は、当時の私
(大学生だったが)妙に記憶が薄いのです。何故だろうか?
そうか当時、この事件の前、1970年3月日航ジャンボ「よど号」が
日本赤軍派によりハイジャックされ北朝鮮入国を敢行した。
当時テレビで実況中継され、日本中は大騒動であった。
1972年2月には、引き続き連合赤軍による浅間山荘事件が勃発した。
映画「突入せよ!あさま山荘事件」(2002)で再現されたが、
当時 テレビで実況中継され、テレビにクギ付けとなったものだ。
その後、凄惨な内輪のリンチ事件も続々発覚した。
そして1972年5月イスラエルのテルアビブ空港で連合赤軍の
岡本幸三ら3名が機関銃を乱射し一般市民96人を殺傷した。
いわゆる「テルアビブ空港乱射事件」である。連合赤軍が
「パレスチナ解放戦線」と連携していたゆえの行動であり、
今回の映画はあながち日本と無縁ではないのです。
当時の日本人(私)は連続テロ報道でウンザリし、マスコミも日本人
テロ事件やリンチ事件で手一杯で、同時期に発生したドイツ・ミュン
フェンのオリンピック村テロ事件まで注目していなかったと記憶する。
さてパレスチナ(アラブ)人とイスラエル(ユダヤ)人は何故
憎みあうのか?それはもう紀元前から続いており、異民族とか
異教徒との戦いというよりもはやDNAレベル(天敵)との戦い に
なってしまっているのだろう。
なにゆえイスラエル(ユダヤ)人はあの狭い土地パレスチナ
(四国ほどの大きさ)に執着するのか? それは「旧約聖書」に
神からもらったと明記してあるからだ。ダヤの英雄(アブラハム)は
神から一人息子(イサク)を生贄に 出すことを命じられた。
神を畏れるアブラハムは神に従い、剣を 振り上げた時神はゆるされた。
そしてパレスチナの土地と一族の 繁栄を約束されたのだ。
映画「天地創造」('66)最終章を参考に・・
その後、ユダヤ人はこの地を出たり、戻ったり、征服されたり、 苦難の
道を歩む、この辺は映画「十戒」('56)を観るべし。その後「ベンハー」('59)
から、「キングダム・オブヘブン」('05) 「アラビアのロレンス」('63)と
他民族に支配されつづける。
果たして、1948年この地にユダヤ民族悲願のイスラエル建国 に至った。
ユダヤ人2000年の放浪の旅は終わったが、かわりに 厖大なパレスチナ
(アラブ)人が難民となってしまった。
爾後何度もイスラエル対アラブ諸国で中東戦争が勃発するが イスラエルは
連戦連勝の圧倒的勝利で領土を拡大し、圧倒的な 軍事力を保持するに到った。
パレスチナ難民はいよいよ居住地 を失い、あるいみパレスチナゲリラは
絶望的戦いをしているのだ。
このドラマはイスラエル首脳から「ミュンフェン事件」の報復で パレスチナ
要人11名の暗殺命令をうけた5人の男達が、暗殺を繰り 返す内に、しだいに
自分の行為が正義なのか?戦は意義あることか 判らなくなってしまい、
最後には国家というものを信用できなく なってしまう内容だ。
この部分は、今見ている私たちは共感しやすいですけど。
現在から見た視点をスピルバーグと脚本家が無理に追筆して、
メッセージ性を入れた思われる
事実を元にしたドキュメンタリー仕立の映画で映像は
「シンドラーのリスト」('93)と「プライベートライアン」('98)
で訓練済の彩色落し で誠にリアルである。
仲間もカール(キャラハン・ハインズ)やハンスなど渋目の
リアル 俳優を配し、実録性を醸し出している。
プロの殺し屋でない自分がいとも簡単に多くの人を暗殺できた、
アヴナーは自分もまた誰かに簡単に殺されると恐怖感に苛まれる。
情報提供者は逆に情報を売るだろう、依頼人の政府も信じられない。
誰も信じられないアヴナー、恐怖におののくアヴナー、
彼の最後の 拠り所は、やはり「家族のみ」であったというのは、
やはり! スピルバーグ仕立でもありました。
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